
突如発表されたイベント中止と人流規制の真相
2026年の幕開けを迎えた中国各地で、大晦日のカウントダウンイベントが相次いで中止された。山東、天津、河南、安徽など広範囲にわたる地域で、直前になって花火大会や音楽イベントの取りやめが発表される異例の事態となった。当局はその理由として「不可抗力」や、大規模な群衆密集による事故防止といった「安全確保」を公式に挙げている。(写真は「李先生はあなたの先生ではない」より)
特に象徴的だったのは、陝西省西安市の鐘楼周辺である。2025年12月31日午後5時から、当局は強力な「進入禁止」の規制を開始し、昨年は大勢の市民が風船を飛ばして熱狂した場所が一変して閑散とした。また、上海市においても、2014年の外灘での将棋倒し事故(死者36人)の教訓から、今年もライトアップショーやカウントダウンを一切行わず、厳格な人車管制が敷かれた。
こうした一連の措置は、単なる事故防止という治安維持の側面だけでなく、当局が大規模な大衆集会そのものをリスクと見なす政策意図が強く反映されている。
失望する市民と「伝統重視」を掲げるナショナリズムの交錯
イベントの有無にかかわらず各地の繁華街には群衆が集まったが、その期待はしばしば裏切られた。浙江省杭州市の湖濱銀泰(インタイム)商圏では数万人が詰めかけたが、年明けの瞬間も大型スクリーンすら点灯されず、祝賀行事も皆無であった。これに対し、現場では罵声が飛び、SNS上でも「消費を促したいと言いながら、行事を禁じてどうやって経済を盛り上げるのか」という冷ややかな声が相次いでいる。
その一方で、こうした「西洋的」な西暦の年越しを否定し、「中国人は伝統的な旧正月(春節)だけを祝えばよい」とする愛国的な意見も目立っている。これは、習近平政権が掲げる「文化自信(自国文化への自信)」の浸透により、クリスマスやカウントダウンといった外来の文化を「崇洋媚外(外国のものを崇めること)」として警戒するナショナリズムの反映と見ることができる。当局による規制は、意図せずしてこうした「脱西洋化」の風潮を後押しする形となった。
香港での異変と2026年の展望
香港においても、2025年12月末に発生した宏福苑での大火災による哀悼の意を示すため、例年の花火カウントダウンが中止された。代わりに中環(セントラル)で音楽イベントが開催されたものの、大陸と同様に社会の雰囲気や当局の統制がイベントの形式に大きな影響を与えている。
2026年の中国社会は、経済振興という課題を抱えつつも、政治的な安定と文化的伝統への回帰を優先する姿勢をより鮮明にしている。市民の間で高まる「消費したい」という欲求と、当局の「統制したい」という意図、そしてナショナリズムが複雑に絡み合った大晦日の風景は、現在の中国が抱える矛盾を端的に象徴していた。
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