中国ポルシェ最大級の旗艦店が「夜逃げ」 倒産ラッシュに揺れる高級車ディーラー網の危機

河南省最大のポルシェ旗艦店が「夜逃げ」 数百人が被害

2025年12月23日、中国河南省鄭州市中原区にある同省最大規模のポルシェ正規販売店「鄭州中原ポルシェセンター」が突如として営業を停止した。翌24日には、広大な展示場から全車両と備品が運び出される「夜逃げ」の事実が発覚。SNSを通じて被害を訴える声が噴出している。

被害者グループの登録情報によれば、納車前の手付金や前払い済みの整備費が返還不能となっており、被害総額は100万元(約2200万円)を突破。さらに数カ月間の賃金未払いを訴える従業員も現れている。同店は中国自動車販売大手「東安控股集団」の傘下にあり、12月22日まで通常営業を装っていた。しかし、運営会社の法定代表者が12月17日に突如交代するなど、周到に準備された計画的な倒産であった可能性が高い。ポルシェ中国は公式に謝罪し、地元当局とともに調査を開始したが、混乱は収まっていない。

「売れば売るほど赤字」 高級車ブランドを襲う構造的危機

この事件は、単なる一店舗の経営破綻ではない。かつて盤石を誇った欧州高級車ブランドの販売網が、中国市場の構造変化によって根底から揺らいでいる象徴的な事例だ。最大の要因は、中国産新エネルギー車(NEV)の急速な台頭と、それに伴う激烈な価格競争にある。

2025年上半期のデータによれば、中国全土の自動車ディーラーのうち52.6%が赤字に転落した。特に伝統的な高級外車ブランドの苦境は鮮明で、10万元(約220万円)を超える大幅な公式値下げが常態化している。値下げをしなければ売れず、値下げをすれば販売価格が仕入れ価格を割り込む「逆ザヤ」が発生するという、出口のない「売れば売るほど赤字」の状況に追い込まれている。

相次ぐ名門ディーラーの閉鎖と業界再編の波

同様の事態は中国全土で頻発している。これまでにBMWの大型店や、天津最大級のアウディ販売店、さらには北京のメルセデス・ベンツ正規販売店などが相次いで閉鎖に追い込まれた。かつて富裕層の象徴であったこれらブランドのショールームが、今や維持困難な負の遺産と化している。

中国政府が推進するNEVシフトの政策意図は、国内産業の育成とエネルギー構造の転換にある。しかし、その急進的な変化に既存の海外ブランド販売網が適応できていないのが現状だ。ディーラー網の維持には莫大なコストがかかるため、販売台数の減少と収益性の悪化が直撃する。今後、中国市場における高級車ビジネスは、従来型の店舗販売モデルから、直販やデジタル併用型への抜本的な転換を余儀なくされるだろう。

[出典]

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