年末に再燃する「討薪潮」:中国各地で相次ぐ農民工の抗議活動
中国では歳末が近づくにつれ、農民工(出稼ぎ労働者)が未払い賃金の支払いを求める「討薪(とうしん)」の動きが急増している。この問題は20年以上にわたって解決されないまま続いているが、2025年の年末は、過去数年と比較しても一段と深刻な局面を迎えている。
シンガポールの「聯合早報」や香港の「香港01」などの報道によれば、過去2週間だけで中国全土において10件以上の大規模な抗議活動が確認された。主な事例は以下の通りである。
- 黒竜江省大慶市: 12月14日から15日にかけ、建設現場の作業員数名が賃金支払いを求め、極寒の中でタワークレーンのジブ(起重臂)に2日間居座り続けた。
- 広西チワン族自治区百色市: 12月15日、高速道路上で10名以上の労働者が道路を封鎖し、未払い賃金の早期解決を訴えた。
- 湖北省漢川市: 12月13日、衣料品工場の労働者数十名が賃金未払いへの抗議として道路を占拠した。一部の情報では、この維権(権利主張)行動は当局によって鎮圧され、拘束者も出たと言われている。
これまで、以前にも農民工が市役所で賃金請求を行い、激しい取り締まりに遭った事例があるように、年末の賃金請求は中国社会における恒例の、かつ極めて緊張感の高い事態となっている。
深刻な構造的問題:政府発注から労働者へ至る「負の連鎖」
なぜ、20年もの間、この問題は解決されないのか。専門家は、単なる企業の資金繰り悪化にとどまらない、中国特有の「深刻な構造的問題」を指摘している。
最大要因の一つは、地方政府の財政難である。現在、多くのインフラ事業や建設プロジェクトは政府が発注元(発包方)となっているが、財政圧迫により政府が建設会社への代金支払いを滞納するケースが続出している。この代金滞納のリスクは、ゼネコンから下請けへ、そして最終的にはピラミッドの最底辺にいる農民工へと転嫁される「負の連鎖」を生み出している。
また、不動産市場の長引く下落により、建設業界全体が未払い問題の「最激戦区」と化している。景気減速の影響で工事案件自体が激減しており、労働者は極めて立場の弱い状況に置かれている。その結果、多くの農民工が法的権利を守るための契約書を交わさないまま、不当な条件下での就労を余儀なくされており、いざ未払いが発生した際の公的な賃金回収をいっそう困難にさせている。
こうした現場での金銭トラブルは、時に四川省の鉄鋼工場での火災と未払いトラブルによる放火事件のように、激しい暴力や事件に発展するリスクも孕んでいる。
製造業への波及と「5日8時間」労働への抵抗
賃金未払い問題は建設業にとどまらず、製造業にも波及している。一部の企業では、生産ラインを維持しながらもコストを削減するため、労働時間の短縮や各種手当(津貼)の引き下げを強行している。
特に深センのテクノロジー企業では、今月に入り数千名規模の労働者による1週間以上の大規模ストライキが発生した。彼らが抗議したのは「週5日・1日8時間」労働制の強制である。一見、ホワイトな働き方に見えるが、残業代に依存して生計を立てる労働者にとっては大幅な減収を意味し、実質的な賃金カットに対する激しい抵抗となっている。以前にも賃金を支払わないことに対する労働者と警備員の衝突が発生しているように、労働現場の不満は常に爆発寸前の状態にある。
当局の対策と「民生の底上げ」への不透明感
事態を重く見た中国共産党および政府は、矢継ぎ早に対策を打ち出している。先日の政治局会議では、「企業間の代金滞納と農民工の賃金問題」の解決が2026年の経済工作における重点課題として明記された。
具体的なアクションとして、国務院は11月から2026年の春節(旧正月)前にかけて「治理欠薪(賃金未払い是正)冬季アクション」を展開している。最高人民検察院も悪質な滞納犯罪への厳罰化を指示し、中華全国総工会は労働者の理性的かつ合法的な権利保護を導く通知を出した。
しかし、根本的な「経済の下押し圧力」や「地方財政の承圧」という構造的課題が解決されない限り、これらの措置は一時的な火消しに過ぎないとの見方も強い。2023年に全国の裁判所が結実させた農民工関連の賃金案件は15万件を超え、執行金額は78億8300万人民元に達しているが、これは氷山の一角に過ぎない。
中国政府が掲げる「民生の底上げ(兜牢民生底線)」という目標達成に向けた道のりは、依然として険しいものとなっている。
[出典]
[関連情報]
- 以前に農民工が市役所で賃金請求を行い、激しい取り締まりに遭った事案
- 中国各地で賃金支払いを求める抗議活動が激化
- 鉄鋼工場での火災。賃金未払いトラブルでの放火か(四川)
- 賃金を支払わないことを巡る労働者と警備員の衝突。双方に怪我
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