米中衛星の至近距離接近が波紋
米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)は2025年12月、同社が運用する衛星インターネット「スターリンク」の衛星と、中国が最近打ち上げた商業衛星が低軌道上で極めて危険な至近距離接近を起こしたと明らかにした。SpaceXによると、最短距離は約200メートルに達し、衝突寸前の「ニアミス」となった可能性があるという。
スターリンク計画を統括するマイケル・ニコルズ副社長はSNSで、中国・酒泉衛星発射センターから9基の衛星を搭載したロケットが打ち上げられた際、関係する運用事業者が既存の在軌衛星との調整や衝突回避に関する協議を行っていなかったと主張した。問題の衛星は高度約560キロで、スターリンク衛星「STARLINK-6079」に接近したとされる。
この指摘は、中国本土メディアや香港、台湾系の中国語メディアでも相次いで報じられた。中国語圏では、スターリンクを巡る過去の接近事例や、米中間の宇宙安全を巡る緊張と結び付けて論じる動きも広がっている。
中国側の反論と責任範囲の線引き
これに対し、当該衛星の打ち上げを担った中国の商業宇宙企業、中科宇航(CAS Space)はSpaceXの主張に反論した。同社は、すべての発射任務で地上の宇宙状況把握システムを用いて発射ウインドウを選定し、既知の衛星や宇宙ごみとの衝突を回避していると説明している。こうした手続きは強制的なものであり、発射段階での安全確保は行われていると強調した。
さらに中科宇航は、仮に至近距離接近が事実であったとしても、それは有効載荷分離から約48時間後に発生したもので、その時点では発射任務はすでに終了していたと説明した。発射事業者としての責任範囲を明確にし、事故の直接的責任から距離を取る姿勢を示した形だ。
この点について、中国本土メディアでは「軌道上運用段階の責任は衛星運用者にある」との論調が目立つ。一方、SpaceX側は、軌道データが共有されなければ自動回避機能にも限界があるとし、事前の情報共有体制の欠如を問題視している。
スターリンク拡張戦略と宇宙交通管理の限界
スターリンク衛星は自動衝突回避機能を備え、進路上に既知の物体が検知された場合、軌道を変更して回避行動を取る仕組みを持つ。ただし、その前提は、相手となる物体がシステム上で把握可能であることだ。公開データによれば、2025年上半期だけでスターリンク衛星は14万4000回以上の回避機動を実施しており、衝突回避が日常運用の一部となっている。
背景には、低軌道における衛星数の急増がある。監視データでは、追跡対象となる衛星や破片は2万4000個を超え、2019年比で約76%増加した。今後10年以内に低軌道衛星は7万基規模に達する可能性があるとされ、米中欧の政府・民間が進める巨大衛星コンステレーション計画が主因となっている。
理論上、1度でも実際の衝突が起きれば、「ケスラー・シンドローム」と呼ばれる連鎖的衝突が発生し、低軌道全体の安全利用が困難になる恐れがある。今回の米中衛星ニアミスは、そのリスクを現実の問題として突き付けた。
[出典]
・中国本土メディア(観察者網):https://www.guancha.cn/internation/2025_12_16_800568.shtml?utm_source=chatgpt.com
・cnBeta(中国語圏ITメディア):https://www.cnbeta.com.tw/articles/tech/1541130.htm?utm_source=chatgpt.com
・香港 on.cc東網:https://hk.on.cc/hk/bkn/cnt/news/20251216/bkn-20251216140432097-1216_00822_001.html

