香港高等法院は2025年12月15日、海外との結託などが争点となっていた裁判で、壹伝媒グループ創業者の黎智英(ジミー・ライ)被告について、有罪判決を言い渡した。裁判所は「外国または域外との結託により国家安全を害したとされる共謀罪」2件と、「扇動的な刊行物を発表したとされる共謀罪」1件の計3罪すべてが成立すると認定した。香港国家安全維持法の施行後、海外との結託を巡る罪が全面的に有罪とされた初の事例となる。
裁判は陪審制を採らず、国家安全維持法に基づき指定された3人の裁判官によって審理された。審理は2023年末に始まり、156日間に及んだ。判決理由書は855ページに達し、異例の詳細さで事実認定と法的評価が示された。
裁判所は、ライ被告を事件の中心的役割を担った人物と位置付けた。判決では、香港で大規模な抗議活動が続いた2019年以前から、被告が海外勢力を通じて中国および香港政府に圧力をかける意図を有していたと認定。国家安全維持法が施行された後も、直接的な表現を避けながら同様の行動を継続していたと判断した。
具体的には、側近を通じた海外政界関係者との接触や、対中制裁を求める働きかけ、国際的な政治ネットワークとの関係が認定された。裁判所は、被告側が主張した「記事は扇動ではない」「法施行後は海外制裁を求めていない」との供述について、前後に矛盾があり信用できないと結論付けた。また、通信記録や共犯証人の証言から、行為には計画性と継続性があったとした。
量刑については、被告側の情状酌量を聴取したうえで、2026年1月に言い渡される予定とされた。国家安全維持法では、罪が重大と判断された場合、終身刑が科される可能性がある。ライ被告は2020年から勾留されており、拘束期間はすでに1800日を超えている。今回の量刑次第では、事実上の終身収監となる可能性も否定できない。
中国政府は今回の判決について、香港特別行政区が法に基づいて国家安全を守るものだとして支持する立場を示した。一方で、英国、ドイツ、欧州連合、米国の政治関係者や人権団体は相次いで懸念を表明している。ドイチェ・ヴェレは、今回の判断が香港における報道・言論の自由の深刻な後退を象徴するものだと指摘した。
国連の恣意的拘禁作業部会は過去に、ライ被告の拘束を国際法に反すると判断し、即時釈放を求めている。複数の国連特別報告者も同様の声明を出しており、今回の有罪認定によって、香港を巡る国際的な緊張は一段と高まる可能性がある。
本件は、単なる一被告の刑事責任にとどまらず、香港国家安全維持法がどのように解釈・運用されるのかを示す象徴的な判例となった。海外との関係や国際的な発言が、どこまで国家安全の名の下で処罰対象となり得るのか。その線引きは依然として不透明であり、香港社会だけでなく、国際社会にとっても重要な注視点となっている。

