
台湾問題や東シナ海情勢を背景に日中間の緊張が高まる中、米国は日本との同盟関係を軸としつつ、中国との関係維持も同時に図る「二重関係」路線を改めて打ち出した。ホワイトハウスは12月11日、トランプ大統領が日本との「非常に強固な同盟関係」を維持しながら、中国とも「良好な実務関係」を保つことは可能との認識を示した。
ホワイトハウス報道官は、日本が米国にとって極めて重要な同盟国であると強調する一方、習近平国家主席との関係維持は米国の国益に資すると説明した。日米同盟と米中関係を対立軸で捉えるのではなく、双方を並行して維持する姿勢を前面に出した形だ。
もっとも、台湾問題や東シナ海の島嶼を巡る摩擦が続く中、外交・安全保障の専門家からは、米国が日中双方の信頼を同時に維持するのは難しいとの見方も出ている。日本側では、米国が経済面で中国との関係改善を模索する中でも、インド太平洋地域における安全保障関与を弱めないかを慎重に見極める必要があるとの声が根強い。
日米演習が示す同盟の現実的重み
こうした外交メッセージと歩調を合わせるように、軍事面では日米同盟の実効性を示す動きが相次いだ。日本防衛省は同日、米軍のB52爆撃機2機が、日本のF35戦闘機3機、F15戦闘機3機とともに日本海上空で共同飛行を実施したと発表した。日米両国は声明で、武力による一方的な現状変更を許さない立場を再確認し、自衛隊と米軍の即応態勢を確認したとしている。
今回の共同飛行は、中国とロシアの戦闘機が東シナ海や西太平洋で合同巡航を行った直後に実施された。日本側は、先に中国軍機が自衛隊機に対して火器管制レーダーを照射したと主張しており、地域の軍事的緊張は一段と高まっている。米政府も、この事案について「地域の平和と安定に建設的ではない」との認識を示し、日米同盟の「揺るぎなさ」を改めて強調した。
一方、中国外務省は、中ロの合同空中戦略巡航は年次協力計画の一環だと説明し、日本側の反応を「大げさだ」と批判している。日米の共同飛行は、こうした中国側の主張に対し、抑止力を視覚的に示す意味合いを持つ。
米国の「二重関係」戦略と地域への影響
米国が掲げる「二重関係」戦略の背景には、中国との全面的対立を避けつつ、同盟国への関与を通じて地域秩序を維持する狙いがある。とりわけ台湾問題は、中国にとって譲れない核心的利益である一方、日本や米国にとっても安全保障上の重要課題となっている。
台湾は日本の南西諸島に近接し、周辺海域は日本のエネルギー輸入や貿易を支える海上交通路でもある。台湾情勢の不安定化は、日本の安全保障と経済の双方に直結する。そのため、日本は日米同盟の抑止力を重視しつつも、米国が中国との関係調整を進める過程で、日本の立場が後景に退くことへの警戒感を抱いている。
今回のホワイトハウス発言と日米共同飛行は、外交と軍事の両面から、米国が日本との同盟を軽視していないことを示すシグナルといえる。ただし、日中間の緊張が長期化する中で、米国がどこまで「二重関係」を維持できるのかは、今後の米中関係や台湾情勢の推移に大きく左右される。
地域の安全保障環境は流動性を増しており、日米同盟の抑止力と米国の対中関係管理のバランスが、東アジアの安定を左右する重要な要素となっている。

