EUがTemu欧州本部を抜き打ち検査 中国補助金疑惑と低価格輸入急増で監視強化

◆EU、Temu欧州本部を抜き打ち検査 中国補助金疑惑で規制強化へ

 欧州連合(EU)は中国発の電子商取引プラットフォームへの監視を強めている。複数の消息筋によれば、欧州委員会は2025年12月10日、アイルランド・ダブリンにあるTemu(拼多多傘下)欧州本部に対し、事前通告なしの抜き打ち検査を実施した。Temuが中国政府から補助金を受け、EU市場で不公平な競争優位を確保している可能性が焦点となった。

 欧州委員会の報道官は同日、「『外国補助金規則(FSR)』に基づき、EU域内で電子商取引を運営する企業を現場検査した」と発表した。対象企業名は公式には明かされていないが、欧州メディアと内部関係者はいずれもTemuが検査対象だったと確認している。FSRは企業が規則に違反した場合、世界売上高の最大10%の制裁金を科すことを認める厳格な制度である。


◆検査の背景―EUは「違反を裏付ける証拠を把握した段階」で行動

 ロイター通信によれば、EUが抜き打ち検査に踏み切るのは、企業が規則違反に関与した可能性を示す一定の証拠をすでにつかんだ段階とされる。EU当局は、突然の検査によって企業に事実関係の提示や改善策を求め、仮に違反が明らかになった場合でも、企業が協力姿勢を示せば制裁軽減の可能性が生まれるとみている。

 Temuは2024〜2025年にデジタルサービス法(DSA)の調査対象となり、2025年7月の暫定認定で「違法商品の流通抑制が不十分」と指摘されていた。EU当局との摩擦は今回が初めてではない。


◆EUは制度改革も加速―150ユーロ以下の関税免除を前倒しで撤廃へ

 中国系プラットフォームへの制度改革も進む。台湾《中央社》が2025年11月13日に伝えたところでは、EU加盟国の財務相はブリュッセルでの会合で、150ユーロ以下のEC小包に適用される関税免除(de minimis)を2026年第1四半期に撤廃することで合意した。これは当初の2028年予定から2年前倒しされる大幅な計画変更だ。

 SHEIN、Temu、AliExpressなどは、現行制度を利用し、中国の工場から衣料品・雑貨・電子製品を極めて低価格で欧州消費者に直送してきた。欧州小売業界からは「競争環境を歪めている」との批判が強まり、デンマーク、ドイツ、スウェーデンなどの小売団体は免除撤廃を歓迎している。


◆欧州規制は新段階へ―Temuは「12月10日時点で無言」

 今回の抜き打ち検査と制度改革によって、EUは中国発の低価格EC商品の流入に対する規制を制度面と執行面の両方で強化する段階に入った。Temuは2025年12月10日時点で検査へのコメントを出していない

 欧州委員会は今後、補助金疑惑の調査結果に応じて、追加の措置や制裁を検討する可能性がある。TemuやSHEINなど、中国系EC企業に対する欧州の制度環境は、今後さらに厳しさを増す見通しだ。


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