
日本総領事館が在留邦人へ安全注意
広島サポーターは専用バス移動と隔離配置**
安全対策が最も強化されたのは日本側だ。在重慶日本総領事館は試合前、公式サイトとメールで在留邦人や観戦予定者に対し、競技場へ直接向かわないよう呼びかけた。
この背景には、日中関係の悪化を受けた現地での反日感情への懸念があり、領事館はトラブルや紛争に巻き込まれる可能性を警戒した。
広島サンフレッチェのアウェーサポーターには、より具体的な措置が講じられた。
- 専用バスでの会場入りと退場
- スタジアム上層の専用エリアへの集約
- サポーター人数を上回る警備員の常駐
警備体制は通常のアウェー戦を大きく上回るもので、今回の試合が特別な緊張感の中で実施されたことが読み取れる。
成都当局は地元サポーターに「文明観戦」
過激行為の禁止と礼節維持を強調**
一方、中国側も観客に対する統制を強めた。成都の複数のサポーターは試合前、派出所やコミュニティ担当者から電話やメッセージを受け、「文明観戦、礼儀ある応対」を求められたと証言した。
通知では以下の点が明確に示された。
- 観戦ルールの順守
- 不適切な行為への不参加
- 過激な言動の禁止
- 成都市民としての礼節の保持
- ホスト側としての姿勢の維持
中国のネット上では、担当者の指示に従わなかった一部のサポーターが派出所へ連行されたとの情報も広がり、当局の統制の強さが話題となった。
交通規制も実施 都市ぐるみの管理体制
成都公安局交通管理局は試合当日、会場周辺で交通規制を実施し、公共交通機関の利用を呼びかけた。
サッカーの国際試合を巡って都市が総動員体制を敷くのは異例であり、今回の中日戦に対する警戒度の高さがうかがえる。
ネットでは「東京」看板の掛け替えや侮辱発言も話題に
今回の試合とは直接関係しないものの、中国国内のネット上では日中関係に絡む話題が相次いで注目されている。
- 河南省開封市の老舗「東京大飯店」が、看板を「開封歓迎您」に変更
→ 日本・東京と名称が同じであることを避けたのではないかとの憶測 - 湖南省益陽市の女性ネットユーザーが配信中に不適切な発言
→ 行政拘留15日の処分
これらの事例は、中国国内で日中問題に触れる事象への社会的敏感さが高まっていることを示している。
**スポーツと外交が交錯する時代
中日関係の緊張が「サッカーの現場」にまで波及**
今回のアジア・チャンピオンズエリート杯の中日戦では、スポーツイベントでありながら、外交環境が安全対策や観戦マナーに直接影響するという構図が改めて明らかになった。
安全注意の発出、サポーターの動線管理、文明観戦の要請など、多層的な措置が講じられたことは、日中関係がサッカー運営にまで影響する段階に入っていることを象徴している。
今後も両国の対立が続く場合、同様の試合では安全管理が一段と強化される可能性がある。スポーツと政治の切り離しが難しくなるなか、現場の緊張は長期化する可能性がある。

