香港・大埔の大規模住宅団地で大火災 7棟に延焼し44人死亡 工事足場の可燃物が急速延焼か

香港・新界大埔区の大型住宅団地「宏福苑」で11月26日午後、近年でも最大規模となる高層住宅火災が発生した。火元は同団地8棟のうちの一つ「宏昌閣」の外壁足場で、午後2時52分に出火。工事中の外壁全体が瞬く間に炎に包まれ、火は強風にあおられて隣接棟へ飛び火し、最終的に 全8棟のうち7棟が延焼 した。
27日正午時点でも完全鎮火には至らず、香港消防処が大量の隊員を投入して消火を続けている。

香港政府によると、11月27日午前6時の段階で44人の死亡が確認され、64人が負傷した。負傷者のうち16人が重体、25人が重傷。死者の中には救助活動中に殉職した37歳の消防士も含まれており、住宅団地火災としては極めて深刻な人的被害となった。行方不明者については、政府が同日午前に公表した「279人連絡不能」という数字が残り、救助隊による確認作業が続けられている。

■火災の背景:「宏福苑」は8棟構成の32階建て大規模団地

宏福苑は32階建ての高層住宅8棟で構成され、数千人が暮らす大規模団地だ。各棟は「宏昌閣」「宏泰閣」「宏新閣」など独自の名称で呼ばれており、火災は外壁補修を中心とした大規模修繕工事の最中に起きた。

団地の外壁には足場が全面的に組まれ、防水幕や保護ネット、ビニールシートなどが多層に張り巡らされていた。香港警察によると、工事の封鎖材に可燃性の発泡スチロールが使用されていたことも確認され、これらの資材が火勢を一気に拡大させた可能性がある。

■延焼の状況:外壁全体が一気に炎上、室内へも拡大

最初の出火後、炎はわずか数分で足場全体を駆け上がり、周囲の棟にも次々と延焼した。消防は外部からの放水、ビル内部への突入、屋上からの延焼阻止という三方向作戦で対応したが、工事足場や保護ネットが火の通り道となり、消火活動は難航した。

一部の住戸では玄関扉が熱変形で開かず、住民がバルコニーに避難する事態も発生。窓枠が溶け落ち、室内全焼した部屋も多く、現場周辺は濃煙で視界が遮られた。

■現場の証言:「火の粉が雨のように降った」「空が真っ黒に」

現場では多数の住民・周辺住民が恐怖の瞬間を語った。

  • 中層階の住民
    「隣の棟から火の粉が雨のように降ってきた。窓全体が赤く染まり、子どもを抱えて浴室に逃げ込んだ」
  • 高層階で救助された男性
    「廊下が真っ暗で一歩も出られなかった。ベランダで濡れタオルを口に当て、助けを待つしかなかった」
  • 周辺住民
    「炎がビルを駆け上がり、空は真っ黒。爆発音が続き、団地全体が炎に包まれたように見えた」

目撃証言はいずれも、工事足場と強風が延焼の速度を急激に高めたという点で一致している。

■当局の対応:800人規模で消火 保護ネットの阻燃性能に疑義

香港消防処は 800人規模の隊員 を動員し、複数棟同時火災という極めて難度の高い状況で救助活動を行った。消防当局は会見で、外壁の保護ネットや防水シートについて「認可された阻燃性能を満たしていなかった可能性がある」と述べている。

これを受け、香港警察は建設会社の捜査に乗り出し、工事を請け負った建設会社の関係者3人を業務上過失致死容疑で逮捕した。燃焼速度の異常な速さから、資材の選定や防火基準の順守に問題があった疑いが強まっている。

■医療機関の対応:病院管理局が重大事故対応を発動

香港病院管理局は重大事故対応を発動し、プリンス・オブ・ウェールズ病院や瑪嘉烈医院、北区医院など9病院を連携体制に移行した。
搬送された負傷者の多くは煙を吸ったことによる気道損傷や一酸化炭素中毒で、集中治療室(ICU)での治療が続いている。

特に、火傷センターや高圧酸素治療センターがフル稼働しており、救助された子どもや高齢者の中には意識混濁の状態で運ばれた例もあった。

■政府の対応:8カ所の避難所開設、交通規制も

香港政府は災害対策本部を設置し、団地周辺に 8カ所の臨時避難所 を開設。また、道路封鎖による混乱を抑えるため、主要道路の一時閉鎖、バス路線の迂回、鉄道の増発を実施した。

李家超行政長官は現場を視察し、
「極めて重大な災害であり、資材や施工の適法性を含め、全面調査を実施する」
と述べ、死因庭での審理を前提とした原因究明を指示した。今後、工事監督体制の見直しも検討される見通しだ。

出典(References)

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