江蘇・鳳凰山の楼閣が全焼 観光客の不注意で火災発生 歴史寺院との誤解も拡散

江蘇省張家港市の鳳凰山景区で11月12日午前11時24分ごろ、復古調の楼閣「文昌閣」で大規模火災が発生し、楼閣が全焼した。火勢は急速に拡大し、木造部分はすべて焼き落ち、鉄筋コンクリートの骨組みだけが残った。火災発生時の映像がSNSで拡散すると、「1500年の歴史を持つ永慶寺が焼失した」とする誤った情報が瞬く間に広がった。

張家港市の火災調査組は13日に調査結果を公表し、火災の原因は観光客が線香やろうそくを扱う際の不注意だったと明らかにした。出火直後に消防が出動し、消火活動は迅速に行われたため、死傷者は出ず、周辺の山林への延焼も防がれた。被害は文昌閣に限定された。

問題の文昌閣は2008年に建設計画が立ち上がり、2009年10月に完成した高さ約23メートルの復元風楼閣である。内部には文化財は収蔵されておらず、外観のみを古風に仕上げた現代建築だった。焼失した建物そのものは歴史的価値を持つものではなく、文化財保護上の損失は生じていない。

「永慶寺焼失」の誤情報が広がった理由

火災後に誤情報が広まった背景には、鳳凰山付近に「永慶寺」と名付けられた現代寺院が存在することがある。現存する永慶寺は1993年に新築された寺院であり、古代の遺構はない。梁武帝期創建とされる歴史上の永慶寺とは別物である。

名称が同じだったことから、「楼閣 全焼」の映像とともに歴史寺院の焼失が誤って結びつけられ、拡散された。中国メディア『極目新聞』や『澎湃新聞』、『星島頭條』も、火災建物が歴史的永慶寺とは無関係であることを強調している。

また、元末〜明初の文人・施耐庵が当地に隠棲し『水滸伝』を著したとの伝承も混同され、誤った歴史情報が付随して広がる結果となった。こうした情報の錯綜は、観光地名と歴史名跡が重なる中国各地でしばしば見られる現象であり、当局は正確な情報提供の必要性を指摘している。

今回の火災は「観光客の線香不注意」という典型的な人的要因が引き金となった。寺院・景勝地では線香やろうそくの使用が一般的だが、火気管理が徹底されていなければ重大火災に発展しやすい。中国国内では寺院・古建築の火災が継続的に発生しており、観光客行動の安全管理、監視カメラの増設、火気禁止区域の再設定などが課題として浮かび上がる。

張家港市当局は「調査結果に基づき法令により責任を追及し、あらゆる場所で消防安全を強化する」と表明した。景勝地のリスク管理体制が問われる中、防火設備の更新と監視体制の強化が、今後の政策面で重点化される見通しである。


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