中国官製メディア、高市首相に下品な悪口雑言 日中関係は新たな緊張局面に

高市早苗首相が、台湾への武力行使が日本の「存亡危機事態」に該当し得ると国会で述べたことを受け、中国政府は強く反発している。中国外務省の林剣報道官はこの発言を「中国の内政に粗暴に干渉し、一つの中国原則に背く悪質な言論だ」と非難し、日本に対して「挑発し越線する行為を直ちにやめよ」と警告した。外交部は日本側に強い抗議を行ったと説明し、台湾問題を完全に中国の内政として位置付けた。

背景には、日本が台湾海峡の安定を自国の安全保障と結びつける動きを強めていることがある。近年は米国との政策協調も進み、台湾有事を想定した防衛議論が拡大している。

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◎官製メディアが異例の侮辱 「頭をロバに蹴られたのか」

さらに緊張を高めたのが、中国中央テレビ(CCTV)傘下のSNSアカウント「玉淵譚天」の過激な投稿である。同アカウントは高市首相を名指しし、「頭をロバに蹴られたのか」と嘲笑したうえ、「これ以上、口から糞を撒き散らすような暴言を続ければ代償を払うことになる」と罵倒した。外国首脳に対する官製メディアの露骨な侮辱は極めて異例で、対外強硬姿勢を国内向けに誇示する意図が指摘される。

台湾中央社は「中国の宣伝機関が外交問題を煽り、国内世論を動員している」と分析。中国国内のナショナリズム制御が外交政策に影響し始めている懸念を挙げた。

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◎中国駐大阪総領事の「斬首」示唆で日本側の怒りが爆発

事態を決定的に悪化させたのが、中国駐大阪総領事・薛剣のSNS投稿である。薛剣は「汚れた頭はためらわず斬り落とすべきだ」と書き込み、高市首相への殺害を連想させる表現として日本国内に衝撃が走った。

日本政府は「極めて不適切」として中国側に抗議。自民党、立憲民主党、公明党、国民民主党はいずれも「殺害予告に等しい」と批判し、薛剣をペルソナ・ノン・グラータとして国外追放するよう政府に求めている。

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◎台湾外務省「反日感情を煽る戦狼外交」

台湾の林佳龍外交部長も、薛剣の投稿を「外交の範囲を逸脱した戦狼外交」と強く批判した。「国内の反日感情を煽り、地域の安定を損なう危険な行為だ」と指摘し、中国が意図的に対日強硬路線を強めている可能性に言及した。

台湾では中国の発言が台日関係を揺さぶる政治的メッセージだと受け止められており、台湾海峡情勢の不安定化を懸念する声が広がっている。

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専門家の間では、中国外務省が薛剣発言への説明を避け、官製メディアが罵倒を重ねている点から「薛剣の言動は北京の黙認を受けた可能性が高い」との見方が強まっている。わずか10日前、釜山で習近平・高市会談が行われ、関係改善の兆しも見られたが、今回の騒動でそのムードは完全に失われた。

日中関係は言葉の応酬を超え、外交・安全保障の枠組みに影響する段階に入りつつある。


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