中国総領事の「斬首」示唆発言で日中関係が緊張 高市首相の台湾有事発言に中国が口汚い反発

日本の高市早苗首相が国会で、台湾有事が「存亡危機事態」に発展し得ると述べ、中国が台湾に武力行動を取った場合には集団的自衛権の行使が可能になると発言した。現職首相が台湾情勢にこれほど踏み込むのは異例であり、発言は直ちに中国側の強い反発を招いた。

中国駐大阪総領事の薛剣は8日深夜、朝日新聞の記事を引用し、「侵入してくる汚れた頭は、ためらわず斬り落とすべきだ。覚悟はできているのか」と投稿した。投稿は翌日削除されたが、日本国内では「殺害予告に等しい」との批判が広まり、在日米国大使も「日本国民への脅威だ」と非難した。

一方、中国のSNSでは民族主義的なコメントが殺到し、「日本が介入すれば新旧の恨みをまとめて清算すべきだ」といった過激な書き込みも相次いだ。薛剣自身も削除後に「台湾有事は日本有事という主張は死への道」など、より強硬な投稿を繰り返した。

木原稔官房長官は10日、薛剣の投稿を「極めて不適切」と断じ、日本外務省が北京の日本大使館を通じて正式に抗議したと説明した。
投稿削除も日本側の要求によるもので、「駐在公館の長として容認できない言動」と批判した。

こうした中国側の姿勢は、日中共同世論調査の発表延期につながった可能性が指摘されており、日中関係が再び緊張局面に入ったとの見方が強まっている(関連:
日中共同世論調査の発表延期 高市首相と台湾代表会談が引き金か)。

中国外交部「個人投稿」と釈明する一方で日本を痛烈批判

10日の記者会見で、林剣報道官は薛剣の投稿を「個人の発言」と位置づけた上で、高市の発言を激しく批判した。
林剣は「日本は台湾独立勢力に誤ったシグナルを送っている」と述べ、日本の台湾当局との接触や国会での議論を「中国の内政に干渉する行為」と断じた。

林剣はさらに、APECでの高市と台湾代表の接触に触れ、日本の行動は「一つの中国」原則に反すると重ねて非難した(参考:
APECで高市首相が台湾代表と会談 中国が抗議)。

投稿削除の理由、中国側の処分の有無を問われると、「個人のSNSにコメントしない」と回答し、明確には説明しなかった。

台湾側は強く反発 日台の連携を強調

台湾の郭雅慧総統府報道官は、中国外交官による威圧的表現を「外交礼節を逸脱している」と批判した。台湾は「理念を共有する国と協力し、インド太平洋の平和と安定を守る」として、日本との連携を改めて強調した。

また民進党の鍾佳濱幹事長は、高市の発言を「安倍晋三路線の継承」と評価し、民主同盟としての日台協力の重要性に言及した。

高市首相「従来見解に基づく発言」も、今後は慎重姿勢

10日の衆院質疑で、高市首相は自身の発言について「政府の従来見解に基づくものだ」と説明した。一方で、「今後は特定の事例を仮定した答弁は避ける」として、慎重姿勢も示した。
日本政府は強硬な中国の反応に対し、対話と抑止の双方を維持する姿勢を取っている(関連:
中国、日米同盟強化に強く警戒)。

高市政権は、就任直後から防衛力整備の加速や台湾情勢への関与姿勢を鮮明にしてきた。今回の外交摩擦は、高市政権の対中抑止政策を象徴する形となった一方、中国側の反発は強まり、日中の緊張緩和は容易ではないとの見方が広がる。

今後、台湾海峡情勢、日米同盟の運用、中国国内の民族主義の動向が、日中関係の不安定要因となり続ける可能性が高い。


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