中国政府は10日、フェンタニル製造に転用される前駆体化学物質の管理強化を目的に、米国、メキシコ、カナダの3カ国を「特定国向け薬物原料化学品の輸出管理制度」の対象に追加した。商務省、公安省、応急管理省、海関総署、国家薬監局の5部門が共同公告を出し、13種類の化学物質を個別に規制品目として指定した。
これら13種類の化学物質を3カ国に輸出する場合は中国政府の許可申請が必要になる。一方、米国・カナダ・メキシコ以外の国への輸出は従来どおり許可不要で、今回の規制強化は3カ国を狙い撃ちした措置となった。
対象国は従来のミャンマー、ラオス、アフガニスタンに今回の3カ国を加え6カ国となる。今回新たに追加された物質はいずれもフェンタニル製造に使われ得る前駆体で、米国が中国製品へのフェンタニル関連関税を20%から10%へ引き下げた直後の発表となった。
米中首脳会談が規制強化の背景に
今回の輸出規制は、10月末に韓国・釜山で行われたトランプ米大統領と習近平国家主席の首脳会談を背景とする。両国は会談で、貿易摩擦の沈静化とフェンタニル対策で協力を進める方針を確認し、米側は関税の引き下げを表明した。
米国はフェンタニル問題を最優先課題として位置づけ、中国に対し前駆体化学物質の対米流入阻止を要求してきた。今回の規制強化は、首脳会談での合意事項を踏まえた政策実行にあたり、中国側が「譲歩」と「協力」を明確に示したものとみられる。
米連邦捜査局(FBI)のパテル長官が先週訪中し、法執行協力や情報共有の枠組みについて中国側と協議した事実も、両国の禁毒協力が新段階に入ったことを示す。
中国・国家禁毒弁公室も管理を強化
中国国家禁毒弁公室は同日、フェンタニルや合成麻薬の製造に転用され得る非規制化学品・設備の輸出管理に関する13項目の通知を発表した。通知は「合法用途がある一方で製毒に用いられる可能性がある化学品」への警戒を強める内容で、高リスク国への輸出時には国際条約や輸入国の法令を厳格に確認するよう求めている。
さらに、外国の法執行機関が中国企業に対し「違法な権限行使」を行った場合は、法的手段や在外公館を活用して権益を守るよう促した。
米国船舶への特別港務費も停止へ
中国交通運輸省は、米国側の措置に歩調を合わせる形で、米国船舶に対する特別港務費の徴収を停止したほか、海運・造船・サプライチェーン関連産業への影響調査も一時停止すると発表した。貿易緊張の緩和と禁毒分野での協力を両立させる政策調整といえる。
フェンタニル問題は、これまで米中対立の象徴であったが、今回の一連の政策は同問題が両国協力の新たな接点となりつつあることを示している。
[出典]
- https://www.cna.com.tw/news/acn/202511100189.aspx
- https://www.hk01.com/即時國際/60293112
- https://udn.com/news/story/7331/9130752

