中国が呼吸器感染症の多発期入り インフルエンザ陽性率が17.5%に上昇

中国が呼吸器感染症の多発期に入りつつある。中国疾病予防管理センターはこのほど、急性呼吸器感染症の状況を公表し、全国の監視指定病院で採取されたインフルエンザ様症例の呼吸器検体から、検出された病原体のうちインフルエンザウイルスが最も多く、陽性率は17.5%だったと明らかにした。一般的なかぜを引き起こすライノウイルスも12.4%と高水準にあり、北方地域では呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)の陽性率が上昇している。

小児病院では呼吸器系外来を受診する子どもが増えており、各地の医療機関では「例年より早い流行期入り」との声が相次いでいる。上海ではRSウイルス感染が急拡大し、家族全員が感染する例も報告されている(参照:
上海で呼吸器合胞体ウイルス感染が急拡大)。


■ インフルエンザの主流株はA型H3N2 児童・生徒で感染拡大

今年のインフルエンザ流行の主流はA型H3N2亜型とされ、流行株の9割以上を占める。中国疾控センターの分析では、5〜14歳の児童・生徒を中心に感染が増加しており、学校での集団感染報告も相次いでいる。

インフルエンザは全身症状が強く、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛などが特徴だ。ワクチンの有効性は維持されており、専門家は「速やかな接種が重症化予防の鍵」とする。

背景には、複数の呼吸器ウイルスが同時に循環する「多重流行」構造があるとみられる。


ライノウイルス(HRV)は一般的なかぜの主因で、子どもの上気道感染の3〜5割を占める。鼻づまり、鼻水、くしゃみなど典型的症状は軽いが、乳幼児や高齢者では気管支炎、肺炎、中耳炎などを併発しやすい。

一方、RSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)は2歳未満の乳幼児で発症しやすく、重症化すると呼吸困難に至る。今年は大都市圏で感染者が増え、小児科外来に行列ができる状況が続く。

関連情報:
中国の呼吸器感染症流行下火に
呼吸器疾患の受診者は減少傾向=国家衛生健康委


治療方針はウイルスごとに大きく異なる。

  • インフルエンザ:確定後の早期投薬が症状緩和に有効
  • ライノウイルス/RSウイルス:特異的な抗ウイルス薬が存在せず、解熱剤などの対症療法が中心

医師は「抗生物質はウイルス感染には無効であり、安易な処方は推奨できない」と警告する。特に乳幼児や高齢者など免疫力が弱い層では、症状悪化が速い場合があり早期受診が求められる。


多重ウイルス循環が医療負荷を増大

今年の流行が激しい背景として、

  • 気温変動の大きさ
  • コロナ後の免疫ギャップ
  • 複数ウイルスの同時流行
    が指摘される。

特に小児医療機関では受診者増で負荷が高まり、医療現場では「今後1〜2カ月が流行の山場になる」との見立てが広がっている。


国家衛生健康委は、季節性インフルエンザのワクチン接種を推奨し、重点対象として

  • 高齢者
  • 子ども
  • 慢性疾患のある人
    を挙げる。

主要薬のタミフル(オセルタミビル)は需要が急増しており、生産企業は24時間体制で供給確保にあたっている。さらに、RNAポリメラーゼ阻害剤の新薬が相次いで承認され、市場供給は改善しつつある。


■ 市民への注意喚起:予防が最大の防御

専門家は、以下の基本的な対策を徹底するよう呼びかける。

  • 石けんと流水による20秒以上の手洗い
  • 咳エチケットとマスクの適切な使用
  • 室内換気
  • 発熱・咳症状がある場合の早期受診
  • ワクチン接種の検討

特に幼児を抱える家庭では、軽いかぜ症状でも家庭内感染に注意が必要とされる。


[出典]

・中国疾病予防管理センター(武漢市政府サイト)
https://www.wuhan.gov.cn/hdjl/rdhy/202511/t20251109_2674168.shtml?utm_source=chatgpt.com

・香港《東網》
https://hk.on.cc/hk/bkn/cnt/news/20251109/bkn-20251109000221043-1109_00822_001.html

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