ネクスペリア混乱が欧州自動車産業を直撃 オランダ接収と中国報復で半導体供給網が突如断裂

ネクスペリア接収と中国の報復措置 欧州自動車業界に連鎖的影響

 オランダ政府が9月末、安全保障上の懸念を理由に半導体メーカーのネクスペリア(安世半導体)を接収し、中国籍CEOを解任した。ネクスペリアはオランダ・ナイメーヘンに本社を置き、中国の電子機器OEM大手、聞泰科技(浙江省嘉興市)の完全子会社である。2018年に聞泰科技が買収し、車載向けパワー半導体を柱に事業を展開してきた。

 今回の接収に対し、中国政府は10月初めに対抗措置として、ネクスペリアの中国工場で生産された半導体の欧州向け輸出を停止した。同社の製品の約7割は中国でパッケージングされており、封止工程が止まることで欧州の自動車メーカーは突然の供給断裂に直面した。

 この一連の動きは、AlertChina でも詳報されている(「ネクスペリア オランダ政府が接収 中国は輸出禁止で報復」・「オランダ政府が中国系半導体大手のネクスペリア接収」)。


欧州大手メーカーが危機感 「自主性喪失」が構造的弱点に

 欧州自動車大手スティランティスのアントニオ・フィロサCEOは、今年4月のレアアースひっ迫に続く半導体危機により、「欧州自動車産業の構造的弱点が露呈した」と述べた。外部政策や地政学的要因に左右されるサプライチェーンの脆弱性は以前から指摘されてきたが、今回の混乱でその現実が一段と鮮明になった。

 メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウスCEOは、米中欧の協議に一定の進展が見えるとして冷静姿勢を保つが、短期的な供給安定に依存しながら戦略調整を進める方針を示した。

 ドイツの車部品最大手ボッシュは、半導体不足の影響でアンスバッハとザルツギッター工場に短時間勤務(Kurzarbeit)を申請した。DW(ドイチェ・ヴェレ)によれば、同社はネクスペリアとの調整に加え、他の供給源確保も急いでいる。


中国とオランダの応酬続く 「独断専行」と非難、対話は継続

 中国商務省は11月1日、条件付きで輸出免除を認める方針を示したと説明しつつ、オランダ側が「独断専行」で実質的行動を示していないと批判した。商務省は、ネクスペリア(オランダ)が10月26日に中国工場向けウエハー供給を停止し、生産不能となった責任は「全面的にオランダにある」と指摘した。

 一方、オランダ経済省は「中国側との対話は継続中」と強調。ロイターの報道でも、両国政府がサプライチェーン維持に向けた建設的解決を模索しているとされる。

 中国側は企業向けに輸出豁免の枠組みを整えたが、ネクスペリアは顧客に対し、東莞工場からの出荷再開時期や品質が保証できないと伝えている。封止工程の停止は依然として解消しておらず、供給の不確実性は残ったままだ。


米中欧の協議進展は限定的 半導体供給網の地政学リスクが拡大

 10月末の米中首脳会談ではネクスペリア問題も議題に上り、ホワイトハウスは「中国が生産再開に向け適切な措置を講じる」と説明した。欧州委員会も協議の進展を評価したが、事態の沈静化には至っていない。

 欧州自動車産業は当面、半導体供給の不確実性と向き合い続ける必要がある。欧州の産業構造における中国依存の高さ、米欧による対中規制強化、そして中国側の報復措置という三重の圧力が重なり、供給網の地政学リスクは一段と増している。

[出典]


・DW中文(https://www.dw.com)
・星島頭條(https://www.stheadline.com)
・中国時報(https://www.chinatimes.com/realtimenews/20251106000007-260410?chdtv)

[関連情報]

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