拘束中の男性が拷問死 中国・河北で警官11人に実刑 長期拘束制度の闇

河北で拷問死、警官11人に実刑判決

河北省石家荘市高邑県で、長期拘束中の男性が警察官らの拷問によって死亡した事件について、関与した11人に有罪判決が下された。刑期は最短1年9か月から最長16年に及び、うち10人が控訴した。
死亡したのは高邑県住宅建設局職員の暴欽瑞さん=当時(33)=。2022年7月、「騒乱挑発」の容疑で新楽市公安局によりホテルに拘束され、電撃や暴行、鉄製の檻に吊るすなどの拷問を受けた。体調が急変し、救命措置もむなしく死亡。司法鑑定では、肺動脈血栓塞栓による急性呼吸・循環不全とされ、長時間拘束や電撃損傷が死因と関連していた。


家族ら10人も拘束、9人が拷問被害

同事件では暴欽瑞さんの父、叔父ら計10人が同時に拘束され、9人が拷問を受けた。叔父の1人は肋骨を折る重傷を負った。事件は村民の暴増強が地元幹部の反社会勢力関与を通報したことが発端で、省・市公安が合同で特別捜査チームを組織し、暴欽瑞らを長期間にわたり取り調べていた。
裁判では、捜査官がゴム管、鉄椅子、鉄製の檻などを用いて暴行し、屈辱的な方法で自白を強要したことが認定された。


張旭光に懲役16年、司法当局が摘発

2025年9月、保定市蓮池区裁判所と望都県裁判所が一審判決を下した。11人のうち4人が故意傷害罪と拷問罪、1人が故意傷害罪、6人が拷問罪で有罪となった。最も重い刑を受けたのは専案組責任者の張旭光で、懲役16年。刑警副大隊長の耿春遠には懲役3年が言い渡された。
被告11人のうち8人は新楽市公安局所属、3人は石家荘市公安局裕華分局所属で、いずれも取り調べに直接関与していた。


長期拘束制度の構造的欠陥

この事件で問題視された「長期拘束制度」は、中国の刑事訴訟法で定められた「指定居所監視居住」を指す。もともとは拘置所の代替措置として導入されたが、実態は密室での長期監禁・取調べに転化している。
人権団体は同制度を「秘密拘束」と位置づけ、監督機構の欠如を批判している。河北や河南などでは同様の死亡事件が相次いでおり、制度の濫用が深刻化している(参照:居住監視の男性、拷問受け死亡 警察官8人起訴 河北)。

同様の人権侵害として、会社経営者が「居住監視」中死亡 後にえん罪と判明 や、精神病院の内幕暴露の女性、再び強制入院 内外で注目 など、司法外拘束による被害が報告されている。


中国司法への課題と国際的波紋

今回の判決は、国家機関内部での違法取調べを摘発した点で異例とされる。しかし制度的な是正には至っておらず、専門家は「公安に対する司法の監督権行使が形骸化している」と警鐘を鳴らす。
中国当局は拷問防止条約に基づき、取り調べ全過程の録音・録画制度を導入しているが、実際には運用が不透明で、長期拘束制度の温床は残されたままだ。河北事件は、司法制度の信頼と人権保護の限界を象徴する事例となった。


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