
浙江省当局が調査に着手
中国メディアによると、スマートフォン大手の小米(シャオミ)が製造する電気自動車(EV)「YU7」内部から正体不明の金属部品が見つかり、浙江省義烏市の市場監督管理局が23日、正式に調査を開始した。問題の車両は浙江省金華市在住の男性が今月12日に納車を受けた新車「小米YU7 Pro」。2日後に運転席の下に硬い突起を感じ、販売店が座席を外して確認したところ、車体底部の穴からL字形の金属部品が見つかった。二次元コードを読み取っても数字列しか表示されず、部品の用途は不明だった。
男性が部品の出所や安全性を問うと、小米側は「工場の不注意」と説明したのみで書面回答を拒否。これを受けて、義烏市市場監督管理局は購入証明書や修理記録の引き渡しを受け、同一ロット車両を抽出検査している。調査では①不明部品の出所、②組立工程の管理体制、③品質管理システムが生産許可基準に適合しているかを重点的に確認する方針だ。
[出典]新浪网、東網
品質管理体制への信頼が揺らぐ
小米は2024年に自動車事業へ本格参入し、「YU7」シリーズを同社の新ブランドとして打ち出した。スマートフォン事業で培った電子制御やスマートコクピット技術を武器に、「中国製EVの新たな勢力」として注目を集めている。しかし、製造現場での品質管理や安全確認体制が十分に整備されていなければ、いかに高度なデジタル技術を搭載しても信頼は得られない。今回の事案は、同社の生産工程の透明性やトレーサビリティ体制の不備を浮き彫りにした形だ。
また、調査を主導する義烏市市場監督管理局は、中国政府が推進する製造業の品質向上政策の一環として、自動車・電池などの新興産業を重点監視対象にしている。今回の介入は、地方当局による品質監督が「国家安全」や「消費者保護」と直結する新たな段階に入ったことを示している。
新興EVメーカーの課題
小米のEV部門は、既存大手と競うために短期間で量産体制を構築したが、開発スピードと品質保証のバランスが課題とされてきた。今回の不明部品騒動は、納車後わずか2日で発覚した点で深刻だ。
過去にも、シャオミ車の安全性を巡るトラブルは各地で報告されている。例えば、河南省では「シャオミのEVが暴走し16台に衝突、複数の負傷者」となった事故や、安徽省での「シャオミEV衝突炎上事故で女子大生3人死亡」、成都では「シャオミSU7 Ultra炎上 電子ロック開かず救出失敗」などが注目を集めた。これら一連の事例は、急成長する新興メーカーが直面する安全・品質リスクを象徴している。
自動車はスマートフォンとは異なり、命を運ぶ製品である。部品1個の誤差や欠陥が致命的な事故につながる可能性がある。小米が今後市場で信頼を得るためには、製品の不具合対応を迅速かつ透明に行い、品質管理の基準を国際水準へ引き上げる必要がある。
中国EV市場での影響
中国の電気自動車市場は急拡大を続け、NIO(蔚来)、XPENG(小鵬)、BYD(比亜迪)などが先行する中、シャオミは「スマート家電の延長としての車」を掲げて参入した。今回の事件はブランドの信頼性に直接影響し、今後の販売戦略にも影を落とす可能性がある。専門家の間では「単発の品質トラブルにとどまらず、サプライチェーン全体の品質保証体制を見直す契機になる」との見方も出ている。
信頼回復への道
今回の調査結果は、今後の中国EV産業全体にとって試金石となる。地方当局による監督強化は、メーカーの透明性と説明責任を求める消費者の声に応える動きでもある。
小米はこれまで、「デジタル技術で車を再定義する」と強調してきたが、その言葉を実証するには、安全と品質の保証が不可欠である。
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