中国、日米同盟強化に強く警戒 「地域安定に資すべき」と日本をけん制

日米首脳、同盟「最強クラス」と強調

アメリカのドナルド・トランプ大統領は10月28日、東京の迎賓館・赤坂離宮で高市早苗首相と初会談を行い、日米同盟を「最強クラスの同盟関係」と称した。両首脳は、重要鉱物やレアアース(希土類)の安定供給を確保するための協力枠組み協定に署名し、経済・安全保障の一体的な連携を進める方針を確認した。
トランプ氏は「日本は米国にとって最高位の同盟国だ。日米関係はこれまでになく強固になる」と述べ、高市首相も「自由で開かれたインド太平洋の実現をともに推進する」と応じた。
(出典:Reuters


中国外務省「日本は深く反省を」

これに対し、中国外務省の郭嘉昆報道官は28日の記者会見で、「日米の安全保障協力は地域の平和と安定の維持に資すべきであり、その逆であってはならない」と発言した。郭氏は「日本は周辺国の安全保障上の懸念を真摯に尊重し、行動と意識の両面で深く反省すべきだ」と述べ、歴史問題と軍事政策を結び付けて批判した。
さらに郭氏は「アジア太平洋地域は平和と発展の地である。いかなる国も冷戦的思考を持ち込むべきではない」と述べ、米国主導の安全保障構想を暗にけん制した。
(出典:中央社CNA


レアアース協定と経済安保の思惑

日米両政府が署名したレアアース協力枠組みは、サプライチェーンの分断リスクを回避し、重要鉱物を戦略備蓄として確保する狙いがある。中国は世界のレアアース精製の約7割を担っており、米国は中国依存の軽減を急いでいる。今回の合意は、経済安全保障を通じた同盟深化の象徴とされる。
高市政権は防衛費を国内総生産(GDP)比2%から引き上げる方針を示し、トランプ政権は「自国防衛への貢献拡大」を日本に求めている。こうした動きに中国が強く反応するのは、経済だけでなく軍事面での抑止構造が進むことへの懸念があるためだ。
(出典:RTI中央廣播電台


米中対立の新局面と日本の立ち位置

米中関係は関税、先端技術、軍事など複数の分野で緊張を抱える。トランプ政権はアジア歴訪中に中国の習近平国家主席と会談予定で、通商交渉の再開を模索している。一方、日本はインド太平洋地域での「多層的パートナーシップ」を強調し、米国との結束を基軸に外交戦略を再構築している。
日米同盟強化は、中国を牽制する「抑止軸」として機能する一方、地域の緊張を高める要因ともなりうる。中国軍は最近、南シナ海で海空合同パトロールを実施し、日米豪比の連携強化に対抗する姿勢を見せている(関連記事:中国軍南部戦区が海空合同パトロール 日米豪比に対抗)。


背景に「強さによる平和」戦略

トランプ政権が掲げる「強さによる平和(Peace through Strength)」戦略は、経済・軍事の両面で米国の影響力を再構築する狙いがある。高市政権はこれに呼応し、在日米軍との協力深化を重視している。日本防衛省は統合軍司令部の新設を進め、自衛隊と在日米軍の共同運用体制を強化する方針だ(関連記事:在日米軍が統合軍司令部新設へ 自衛隊と連携強化)。
一方、中国側はこうした動きを「軍事ブロック化」とみなし、アジアの多極的秩序を訴える構えを強めている。外交的駆け引きの行方は、台湾海峡や南シナ海を含む地域全体の安定に直結する。


専門家の見方

安全保障研究者の間では、「高市政権の外交は安倍外交の延長線上にある」との見方が広がる。台湾との協力深化や日米台三角連携を提唱する発言も増えており、麻生太郎元首相も「日米台が抑止力として機能する覚悟が必要だ」と述べている(関連記事:麻生元首相「日米台が抑止力機能の覚悟必要」)。
今後、日米同盟の深化が東アジアの安全保障構造にどのような影響を与えるかが焦点となる。


[出典]
CNA中央通訊社RTI中央廣播電台Reuters

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