米欧、対ロ制裁を拡大 中国製油所や国有企業も標的に 中国は報復を警告

米欧が制裁連携を強化、中国企業を初標的に

米国と欧州連合(EU)はロシア制裁の新段階に踏み出した。米国は10月22日、ロスネフチとルクオイルの2大石油企業を制裁対象に指定。米財務省は「クレムリンの戦費調達ルートを断つ」と強調し、米国内資産の凍結と米企業の取引禁止を命じた。一方、EUは翌23日に第19弾制裁を発表し、中国企業12社を新たにリスト入りさせた。対象には、中国の大手製油所や石油貿易会社が含まれ、米欧がエネルギー分野で初めて対中圧力を本格化させた形となる。
外部リンク:
米欧拡大制裁 中国製油所が初の対象に(RFI)


中国国有企業、ロシア原油の海上購入を停止

米国の制裁発表後、中国石油天然気集団(CNPC)、中国石油化工集団(シノペック)、中国海洋石油集団(CNOOC)、振華石油の4大国有企業が、ロシア産原油の海上購入を一時停止した。制裁による二次的な金融リスクを回避するためである。中国は通常、ロシアから日量約140万バレルの原油を輸入しているが、その多くは地方の独立系製油所「ティーポット」が担っている。大手国有企業の取引停止は一時的措置とみられるものの、ロシアの輸出収益への打撃は避けられない。
外部リンク:
米国、ロスネフチとルクオイルを制裁(RFI)


EU、第19弾制裁で中国製油所を指定

EUの制裁対象には、CNPC傘下の遼陽石化公司(日量20万バレル)と、民間主導の山東裕竜石化有限公司(同40万バレル)が含まれる。両社の合計処理能力は中国全体の製油能力(約1900万バレル/日)の3%を占める。EUはさらに中国石油香港有限公司と天津西山福盛国際貿易有限公司を追加し、「ロシアの制裁回避に関与した」と断定。英国も先行して裕竜石化を制裁しており、中東やカナダの供給元が同社への出荷を停止した。
外部リンク:
EU、中国製油所を初制裁(香港on.cc)


中国、報復措置を警告し対抗姿勢を強化

中国商務省は声明で「EUは中国側の交渉を無視し、一方的に行動した」と非難。「国際法の根拠がなく、世界のエネルギー安全を損なう」と警告した。さらに「必要な措置を取り、企業の正当な権益を守る」として、報復的対応を示唆。中国はすでに制裁問題をめぐり、欧州や日本との外交的摩擦を深めている。
内部リンク:
中国、石平参院議員に制裁発表 日本国会議員への初適用で入国禁止措置 — 中国安全情報局
英米政府、カンボジア太子集団を制裁 暗号資産150億ドル凍結 — 中国安全情報局
米国の港湾利用料に中国が報復措置「特別港務費」発動 — 中国安全情報局


エネルギー市場と地政学への波及

中印両国がロシア原油の購入を抑制すれば、ロシアの輸出収益が急減し、国際市場では中東・アフリカ産原油の価格上昇が見込まれる。中国はエネルギー供給の多角化を迫られ、サウジアラビアやブラジルとの取引を拡大する動きも出ている。
エネルギー制裁は経済圧力の手段であると同時に、地政学的再編を促す要因にもなっており、米欧中ロの対立構造はさらに固定化する見通しだ。


[出典]
RFI:米欧拡大制裁 中国製油所が初の対象に
香港on.cc:美欧拡大制裁 中国製油所が初の対象に

[関連情報]
オランダ政府が中国系半導体大手のネクスペリア接収 — 中国安全情報局
米中が制裁関税の引き上げ中止 第1段階の交渉妥結 — 中国安全情報局

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