中国、レアアース輸出規制で世界供給網に衝撃 欧州・米国・日本が脱中国依存を加速

中国のレアアース輸出規制が世界市場を揺るがす

中国政府が11月8日に発動する新たなレアアース輸出規制が、世界の自動車・電子機器業界に波紋を広げている。対象となるのは主に重レアアースで、輸出には政府の特別許可が必要となる。これにより、欧州や北米の自動車メーカーはモーターや電装部品の生産計画見直しを迫られている。

ロイター通信によると、10月9日の発表後、中国の輸出企業には海外メーカーから大量の注文が殺到。出荷を急ぐ動きが続くが、欧州向けの海上輸送には最短でも45日を要し、供給不安は避けられない。


世界の自動車産業が“備蓄戦争”に突入

トヨタ自動車北米部門のライアン・グリム副社長は「新たな規制が続けば、2か月で生産停止に追い込まれる」と警鐘を鳴らした。ボッシュのブルーノ・ガヘルティ氏も「発効前に超過備蓄を進め、衝撃を緩和する」と語った。現代自動車の部品供給企業幹部によれば、年初に積み増した在庫はすでに尽きつつあるという。

今回の規制では、自動車の後視鏡やワイパー、燃料ポンプなどに使われる小型モーター用磁石も影響を受ける。電気自動車(EV)では使用量が特に多く、供給網への打撃が懸念される。


中国の支配力、世界シェア9割

コンサルティング会社アリックス・パートナーズによると、中国は世界のレアアース採掘の約70%、精錬能力の85%、磁石生産の90%を掌握している。ドイツの金属粉末供給会社NMDのナディン・ラジェナ最高経営責任者(CEO)は「在庫は限られ、顧客は中国以外の調達源を探しているが、短期的な代替は不可能だ」と述べた。重レアアース分野では中国が世界精錬能力の99.8%を支配しており、代替供給は事実上存在しない。


欧州連合、G7と連携して対抗策を検討

欧州連合(EU)は中国のレアアース輸出規制に対し、対抗措置を検討している。経済政策担当のヴァルディス・ドンブロフスキス執行副委員長は「中国が改善しなければ反制も視野に入れる」と独ハンデルスブラット紙の取材に応じた。EU貿易担当のマロシュ・シェフチョビチ委員も「数日以内に中国当局と緊急協議を行う」と述べ、外交ルートでの交渉に入る構えを示した。

背景には、7月に中国とEUがレアアース輸出手続き簡素化で合意したにもかかわらず、中国がその後も厳格な管理を維持し、今月さらに対象を拡大した経緯がある。EUはG7各国と協調し、供給網の多角化を急ぐ方針を固めている。


米日が脱中国依存を加速、欧州は出遅れ

米国と日本は早くからレアアース供給網の再構築を進めてきた。日本は2010年の尖閣諸島衝突を契機に調達先を多角化。米国では鉱山会社ペンサナ(Pensana)がアンゴラで採掘を開始する予定で、政府は鉱業会社MPマテリアルズへの出資を拡大し、中国価格の2倍を下限とする価格保証制度を導入している。

一方、欧州は投資・政策支援の遅れが指摘されている。トレーディウム社の専門家ヤン・ギーゼ氏は「欧州は企業参入を促す仕組みが乏しく、自動車産業は依存構造から脱却できていない」と語る。中国の支配力を背景に、欧州勢はエネルギー転換戦略の根幹を握られた形だ。


[出典]
ドイチェ・ヴェレ中国語版:中国稀土出口限制升级 西方汽车行业面临威胁
香港01:中国稀土出口管制倒數 全球車企掀起搶購潮
星島頭條:稀土限令中欧貿易緊張
RFI(フランス国際放送):欧盟考虑对华稀土出口限制采取反制措施

[関連情報]
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