ネクスペリア オランダ政府が接収 中国は輸出禁止で報復 欧州の半導体供給網に緊張拡大

オランダが安世半導体を接収 国家安全を理由に経営権を停止

オランダ政府は9月末、中国資本の半導体メーカー安世半導体(ネクスペリア)を国家安全上の理由で接収した。安世はオランダ・ナイメーヘンに本社を置き、中国の聞泰科技の子会社である。政府は同社内部に深刻なガバナンス上の欠陥があるとし、冷戦期制定の物資供給法に基づき介入した。これにより中国人CEO張学政の職務を一時停止した。米国は同CEOが残留する限り輸出管理リストから除外しないと警告しており、オランダの判断は米国との安全保障連携の一環とみられる。

中国側が報復 輸出禁止を発動し供給網に影響

オランダ政府の決定に対抗し、中国商務部は10月4日、安世中国法人と下請け企業に対して特定部品や完成品の輸出を禁止した。安世の製品は主にドイツ・ハンブルクで生産され、中国で封止加工された後、世界の自動車メーカーに供給される。欧州自動車工業会(ACEA)は「生産ラインの停止や部品不足のリスクがある」と警告した。欧州の自動車業界は新型コロナ流行時の混乱を教訓に在庫確保を進めており、再び供給網の混乱に直面する恐れがある。

中国法人が独立運営を宣言 本社指令を拒否

安世半導体の中国法人は10月中旬、社内通達で「国内経営チームが独立して意思決定を行う」と強調した。社員に対しては「OutlookやTeamsを通じて送られる外部指令は実行を拒否できる」と指示し、給与支払いと事業継続を明言した。オランダ本社は「虚偽情報であり、中国市場を放棄した事実はない」と反論したが、両社の経営統合は事実上分裂状態にある。中国法人の一部社員は「社内は混乱しており状況は不透明」と証言している。

欧州自動車産業への影響と地政学的リスク

安世半導体は自動車の照明やエアバッグ制御などに用いられる汎用チップを製造しており、製品の約80%を中国で加工している。欧州メーカーの依存度が高く、輸出規制が長期化すれば生産遅延やコスト増加が避けられない。半導体供給網の地政学的分断は加速しており、欧州は安全保障を理由に中国資本の技術支配を制限する一方、中国も報復的措置で主導権を争う構図となっている。

政治交渉へ オランダ経済相が中国側と会談予定

オランダのカレマンス経済相は10月19日、「われわれは中国と相互依存の関係にあり、技術流出を防ぐための措置だ」と述べ、数日内に中国の王文濤商務相と会談すると明らかにした。外交的な打開を図る動きも出ているが、欧州と中国の半導体協力は信頼低下が続く。両国政府の駆け引きが長引けば、サプライチェーンの安定に深刻な影響を及ぼす可能性がある。


[出典]

・[ドイチェ・ヴェレ:中国法人が独立運営を宣言](https://www.dw.com/zh/%E5%AE%89%E4%B8%96%E6%8E%A7%E5%88%B6%E6%9D%83%E4%BA%89%E5%A4%BA%E6%88%98%E5%8A%A0%E5%89%A7%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%8C%BA%E5%AE%A3%E5%B8%83%E7%8B%AC%E7%AB%8B%E8%BF%90%E8%90%A5/a-74429868)
・[中央通信社:オランダ経済相 中国官員と近日会談へ](https://www.cna.com.tw/news/acn/202510200196.aspx)
・[フィナンシャル・タイムズ:中国法人が本社指令を拒否](https://www.ft.com/content/20a41258-48ff-4d18-bf04-e45c8238229e?utm_source=chatgpt.com)

[参考]

オランダ政府が中国系半導体大手のネクスペリア接収 中国は報復で輸出禁止 米欧の包囲網が強化
半導体製造装置大手、深セン子会社清算 約950人削減
エヌビディアのAI半導体に輸出許可 直ちに出荷

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