中国政府は10月中旬、レアアース(希土類)輸出の管理を強化した。商務省は新たな規制を公布し、製品や技術の国外移転を制限した。目的は「大量破壊兵器などへの転用防止」と「国家および世界の安全維持」にあると説明した。報道官の何詠前は16日の会見で「法令に基づく正当な措置であり、特定国を狙ったものではない」と述べ、民生用途の合法的な輸出は許可対象になるとした。
技術移転も規制対象に 磁性材料や再生資源処理を含む
新制度は磁性材料、冶金・分離技術、再生資源処理技術などを対象に加えた。設計図や製造プログラムなど技術情報も規制に含め、輸出事業者や国外移転を行う個人・組織には許可申請を義務づけた。申請時には最終用途と受領者の申告が必要となる。人民日報は「安全保障と拡散防止を目的とした制度整備であり、合法貿易を妨げない」と報じた。
米国への反制の色合い 中国は「秩序管理者」を自認
国務院直属メディアの中国網は13日、「中国は世界のレアアース秩序の管理者になりつつある」と論じた。米国がサムスン電子やSKハイニックス、TSMCなど中国拠点の半導体生産を規制したことを挙げ、今回の措置を「対等な反制」と位置づけた。香港01は「中国産レアアースや中国技術を用いた外国製品にも適用される」とし、米国の域外規制に対抗する性格を指摘した。
軍事・半導体用途は厳格審査 戦略資源政策を一段強化
環球時報や鳳凰新聞は、軍事転用や半導体製造など「敏感分野」への輸出は厳しく制限されると伝えた。専門家は「対象の明確化と域外適用の制度化が進んだ」と分析する。中国はガリウム、ゲルマニウム、黒鉛など戦略資源でも段階的に輸出制限を導入しており、今回のレアアース管理強化はその延長線上にある。
「供給網で主導権握る転機」との評価広がる
中国国内では、今回の規制を「国際供給網で主導権を握る転機」とみる声が多い。従来は米国などの規制を受ける側だったが、資源供給を通じて国際ルール形成に関与する立場へ転じたとの評価が広がる。インターネット上では「米国の手法を逆手に取る大国の対応」との意見が多く、レアアース分野での発言力強化を肯定的に捉える論調が目立つ。
[外部リンク]
・人民日報|中国依法实施稀土出口管制并非针对特定国家和地区
・中時電子報|中國商務部再回應稀土出口管制措施
[内部リンク]
・米中貿易戦、レアアース摩擦で再燃 中国「二重基準」と反発 首脳会談は予定どおり
・中国、レアアース関連輸出を全面規制 米中首脳会談前に戦略資源で圧力強化
・中国レアアース最大手で幹部相次ぎ退職