
中国公安部は2025年10月、ミャンマー北部コーカン地区で活動していた犯罪組織「四大家族」のうち、劉家と魏家の2グループを摘発し、法に基づき起訴したと発表した。両家は通信詐欺や賭博、麻薬、売春を一体化した巨大犯罪ネットワークを築き、不法収益は100億元(約2000億円)を超えた。中国中央テレビ(CCTV)や香港メディアが報じた。
両家は中国国民を主な標的とし、SNSや通話アプリを通じて詐欺行為を組織的に展開。得た資金を地元の政治勢力や治安部隊の買収に使い、独自の経済圏と武装勢力を形成していた。中国公安当局は「越境通信詐欺の温床を断つ」として、東南アジア諸国との共同捜査を進めている。
劉家:麻薬資金で拡大、治安隊を私兵化
「果敢首富」と呼ばれた劉家は、麻薬取引で得た資金を基に事業を多角化し、2010年代半ばから通信詐欺を企業的に運営。28カ所の詐欺拠点と7カ所の賭博場を設け、女性への薬物強要や売春斡旋も行った。2015年には自前の民兵組織「龍塘民兵大隊」を設立し、地域の治安隊や刑警隊を買収して実質的に私兵化。園区の安全確保、脱走者の取り締まり、反抗者の排除などに利用した。
劉家は慈善事業を通じて「社会貢献者」を装い、寄付や学校建設で名声を築く一方、裏では政治資金を供与して現地勢力と結託した。公安部によれば、こうした「治安の私有化」により外部からの摘発を防ぎ、内部統制を徹底していたという。2023年以降、劉正祥ら主要容疑者がミャンマー当局から中国側に引き渡された。
魏家:国境警備を掌握し「殺人祭天」も
魏家は果敢辺防部隊の最高責任者・魏懷仁が指揮し、国家に登録された正規武装組織を利用して14カ所の詐欺園区を運営した。賭博・詐欺資金は140億元に達し、中国人8人が死亡した。魏懷仁の甥・陳大衛は、金主との結義儀式で「殺人祭天(無関係の人間を殺害して天を祭る)」を行ったと供述。福建省泉州市検察院は、詐欺、殺人、恐喝、越境組織などの罪で複数の関係者を起訴した。
公安当局は「魏家は公的権限を利用しながら犯罪事業を組織化した」と指摘。果敢地区の治安部門や民兵を支配し、園区全体を軍事的に管理していた。中国公安部は武装犯罪と通信詐欺が結合する構造に危機感を強めている。
東南アジアに残る犯罪ネットワーク
福建省公安局の郭衍副局長は、劉家と魏家の壊滅にもかかわらず、中間幹部や資金提供者が東南アジアの一部で活動を継続していると警告。現地では詐欺・賭博園区の再編や新設が進んでいるとされる。公安部は「国際的な犯罪温床の完全排除を目指す」として、タイ、ラオス、ミャンマー各政府との合同取締りを強化する方針を示した。
「四大家族」事件では、白家と明家もすでに司法手続き段階に入り、すべての組織が起訴対象となった。明家の関係者11人には死刑判決が下された(AlertChina報道)。中国公安省高官は現地で摘発状況を視察し(同サイト報道)、被害者の救出と再発防止策を検討している。
背景:特殊詐欺の「産業化」と中国の対応
コーカン地区は中国系住民が多く、雲南省と経済・文化的に密接な関係を持つ。近年、現地の武装組織が通信技術を悪用して「オンライン詐欺産業」を形成し、中国・タイ・マレーシアなど周辺国に被害が拡大した。
中国公安部は2023年以降、現地当局と協力し、10万人以上を使役する特殊詐欺団の摘発を進めている(関連報道)。
ミャンマー北部の治安不安が続くなか、コーカン地区は依然として「無法地帯」と化している。中国政府は法執行機関間の連携を強化し、越境通信詐欺への包括的な封じ込めを進めている。




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ミャンマー北部の中国マフィア「明家」11人に死刑判決 特殊詐欺、カジノ、麻薬取引、売春などに関与
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