黒竜江で麺で中毒、男性1人死亡・1人重体 伝統発酵食品に再び潜む“ボンコレキ酸”の脅威

自家製「酸湯子」を食べた2人が倒れる

中国黒竜江省チチハル市竜江県で10月12日夜、村の住民2人が自家製の伝統的麺料理「酸湯子」を食べた後に体調を崩し、うち1人が死亡、もう1人が集中治療室(ICU)で治療を受けている。

報道によると、亡くなった張さんと親戚の劉さんは、同じ村の隣人宅でトウモロコシの収穫を手伝った後、夕食に招かれた。その席で酸湯子を食べた2人はまもなく激しい嘔吐や脱力感を訴え、約30キロ離れた竜江県第一人民医院に搬送されたが、張さんは途中で死亡した。

地元公安局は「当夜に通報を受け、すでに調査を開始した」と発表。病院関係者も「2人が12日夜に救急搬送された。張さんは死亡し、もう1人の容体は不明」と明らかにした。


過去にも9人死亡 発酵食品の「見えない毒」

酸湯子は、トウモロコシを水で粉砕して自然発酵させ、太い麺状に加工した東北地方の伝統食品である。家庭でもよく作られるが、温度や衛生管理を誤ると細菌が繁殖し、致死率の高い毒素が生じることがある。

2020年には、同じ黒竜江省鶏東県で一家9人が酸湯子を食べて死亡する事件が発生。国家衛生健康委員会は原因を「ヤシ毒性シュードモナス菌(Pseudomonas cocovenenans)による汚染」と断定し、この菌が生み出すボンコレキ酸(Bongkrekic acid)が死因だったと公表した。
この毒素は高温で煮沸しても分解されず
、中毒後に有効な治療法がない。致死率は50%を超えるとされる(参考:CCTVニュース人民網)。


「酸湯子」だけではない 潜む発酵食品リスク

国家衛生健康委員会は当時の声明で、長期間発酵させた米・トウモロコシ食品の摂取を避けるよう警告した。北方では酸湯子のほか「臭碴子」「格格豆」、南方では「吊漿粑」「河粉」なども同様の発酵食品で、条件次第では毒素が生成される危険がある。

ボンコレキ酸は細胞内のエネルギー代謝を阻害し、摂取後1~20時間で頭痛、吐き気、倦怠感、昏睡などを引き起こす。見た目や匂いで判断できない点も厄介だ。専門家は「家庭発酵食品の安全指導や衛生基準の強化が必要」と指摘している。

事故の焦点と今後の調査

今回の黒竜江事件では、(1)酸湯子の原料と発酵環境、(2)保存方法、(3)他の参加者に異常がなかった理由、(4)司法鑑定による毒素特定――などが焦点となっている。
地元当局は司法解剖を実施し、結果を公表する予定だ。

一方、地元メディア「極目新聞」は、村内の他の住民が「最近気温が高く、発酵食品の保存が難しい」と語ったと伝えている。これが汚染拡大の一因となった可能性もある。


家庭での防止策と政府の対応

中国では食中毒の半数以上が家庭内調理によるものとされる。特に発酵・保存食品の管理が不十分な農村地域ではリスクが高い。当局は以下の注意を呼びかけている。

  • 発酵食品を高温多湿の環境で長期間保存しない
  • 酸味や異臭が強い場合は食べない
  • 家庭での自然発酵は避け、市販の安全な発酵食品を利用する
  • 異常を感じたらすぐに病院を受診し、食品の残りを検査に提供する

(参考:新華社


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出典:極目新聞、人民網、新華社、CCTVニュース、中国新聞網ほか

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