中国、レアアース関連輸出を全面規制 特習会を前に戦略資源で圧力強化

中国、レアアース関連技術に包括的な輸出規制を発表

中国政府は10月9日、レアアース(希土類)関連製品および技術に対し、相次いで新たな輸出管制を導入すると発表した。
対象はホルミウム・エルビウム・ツリウム・ユウロピウム・イットリウムなど中重レアアース5種に加え、リチウム電池材料、人工黒鉛負極材、超硬素材、関連機械設備・技術など。
商務部と税関総署の共同公告により、11月8日から正式に施行される。

中国商務部報道官は声明で「対象物項は明確な軍民両用性を持つ」と説明し、
「国家の安全と利益を守り、防拡散など国際的義務を履行するための国際的に通用する措置だ」と主張した。
一方で、「いかなる国や地域を狙ったものではない」とも付け加えた。


「合理的過渡期」設置 人道目的の輸出は免除対象に

今回の措置では、既存契約の履行や企業のコンプライアンス対応を考慮し、一定の移行期間(過渡期)が設けられた。
商務部は「関係国や地域にはすでに通知済み」としたうえで、
緊急医療・災害救助・公衆衛生目的の輸出については許可を免除する方針を明らかにした。

一方、許可なしでの輸出は全面禁止となる。
対象は製品のみならず、レアアースの採掘、精錬分離、金属製錬、磁性材料の製造、二次資源の再利用に関する技術・媒体・生産ラインの設計や保守技術までを網羅する。
さらに、中国国民や法人が海外のレアアース採掘・精錬事業に協力することも制限される。


フランス紙「特習会を前に筋肉を誇示」

フランス『ル・モンド』紙は、「トランプ氏と習近平氏の会談を数週間後に控え、中国は外交カードとして経済的圧力を強化した」と分析。
RFI(仏国際放送)は、「米国が最先端チップを支配するのに対し、中国はレアアースを武器にしている」と報じた。

同紙によると、中国は米国が行ってきた《国際武器取引規則(ITAR)》型の“域外管轄”を導入しようとしている。
米国が「1本のネジでも米国製なら規制対象」とするのと同様に、中国も「中国技術が使われた製品」を統制下に置く狙いがあると指摘した。


世界市場に衝撃 米欧は代替供給源探しを加速

国際エネルギー機関(IEA)の統計によれば、**中国はレアアース採掘で世界シェア61%、精製・加工では92%を占める。
このため、中国の輸出制限は世界の電動車・半導体産業に直撃し、サプライチェーン全体に不安が広がっている。

米欧各国は、グリーンランドやオーストラリアなど新たな資源確保に動いているが、
精錬技術の多くは依然として中国に依存しており、短期間での代替は困難とされる。


「経済安全保障カード」としての稀土

今回の規制は、**経済安全保障と外交戦略を融合した“レアアース・カード”とみられる。
米中間では半導体、AI、量子通信、EV電池など先端分野で覇権争いが続いており、
中国は戦略鉱物を外交・防衛政策の一環として利用し始めた。

一方、トランプ政権側も10月末のAPEC(韓国・慶州)での首脳会談に向け、
関税政策とサプライチェーン再編をめぐる交渉を準備している。
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今後の焦点:特習会での議題化と報復応酬の行方

トランプ・習会談(通称「特習会」)では、
このレアアース規制が米中経済対話の主要議題となる可能性が高い。
米側は「技術覇権」や「市場アクセスの不平等」を問題視し、中国側は「国家安全の権利」を主張する見通しだ。

両国の駆け引き次第では、レアアースから半導体・AI・通信機器へと規制の連鎖が広がる恐れもある。
世界経済は再び、米中の戦略的摩擦の中で緊張局面を迎えつつある。


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