
中国乗用車市場情報聯席会(CPCA)の崔東樹(崔东树)事務局長は7日、中国の自動車ディーラーが深刻な経営危機に陥り、新車販売で広範な赤字を抱えていると明らかにした。崔氏は「売れば売るほど赤字」という異常な構造が常態化しており、政府部門に対して段階的な金融支援策を早急に導入するよう訴えた。
深刻化する資金難、前例なき圧力
崔氏は「人民財訊」に寄稿した文章で、全国のディーラーが現金流の赤字経営に陥り、資金連鎖(キャッシュフロー)の断裂リスクが急上昇していると指摘した。
「ディーラーの運転資金は維持の限界に達しており、資金が尽きれば市場供給にも影響しかねない」と警鐘を鳴らした。
主因は二つある。第一は消費低迷とメーカーの卸売圧力。在庫が高止まりするなか、販売店は資金負担と融資コストを抑えるため、やむなく値下げ販売に走っている。第二は価格戦(値下げ競争)の激化による「進銷倒掛」だ。仕入れより安く売る構造が蔓延し、販売台数を増やすほど損失が膨らむ悪循環に陥っている。
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EV転換が生死を分ける 業界再編の波
崔氏は「粗利益率の低下と中古車部門の不振が重なり、業界は構造的な転換点にある」と指摘。
伝統的な内燃機関車市場が縮小する一方、新エネルギー車(NEV)の浸透率は55%を突破し、産業構造の再編が進行しているという。
「EV転換の遅れはディーラーの死活問題だ」と強調。2025年には新エネルギー車を扱うディーラーのうち黒字を維持できたのは42.9%にとどまり、内燃車ディーラーの58.6%が赤字に陥った。
業界全体の純利益率も2019年の2%から2025年にマイナス2%まで悪化。永達汽車、美東汽車、正通汽車など大手ディーラーグループも軒並み損失を計上している。
政府に支援要請 「金融政策が市場安定の鍵」
崔氏は政府に対し、以下の支援を求めた。
- 金融環境の特別調査の実施
大手100社から中小ディーラーまでの資金需要を把握し、業界全体の金融支援政策を策定する。 - 融資延長と信用枠拡大
返済期限を柔軟に延ばし、融資の用途を拡大。金融機関がリスクを管理しつつ支援を強化できる体制を整える。 - 政策性銀行による特別融資枠の設立
国家開発銀行などが自動車ディーラー向け融資を拡大し、消費者の自動車ローンにも利子補助を適用。
「金融支援と政策誘導こそが市場の安定と業界の健全発展を保つ鍵だ。政府が迅速に対応すれば、ディーラーの資金難を和らげ、自動車市場の安定を取り戻せる」と述べた。
若年層の購買力低下も背景に
中国では若年層の失業率上昇が自動車販売不振の一因となっている。国家統計局が公表した16~24歳の失業率は14.9%、一部研究者は実質46.5%に達すると分析する。購買層の消費力低下がディーラーの経営を圧迫している。
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16~24歳の失業率14.9%=国家統計局が半年ぶり公表
中国青年層の失業率、実質46.5%=北京大副教授が見解
今後の焦点
崔氏は、ディーラーの収益構造改善には金融支援とともに構造改革が不可欠と指摘した。EV販売強化、在庫の効率管理、デジタル金融導入などが今後の課題となる。
中国自動車市場は依然として世界最大規模だが、過剰生産と価格競争が続く現状では、政府の介入なくして安定は望めない。
出典:人民財訊、聯合報、中央社(2025年10月7日)