広西で百年に一度の洪水 台風20号の豪雨で住宅倒壊  国慶節の観光に深刻な打撃

台風20号の影響と被害状況

中国南部の広西チワン族自治区は9月29日以降、台風20号(ブアローイ)の残留雲系による豪雨に見舞われた。百色市や崇左市では「百年に一度」と形容される洪水が発生し、住宅の倒壊や住民の避難が報告されている。多くの地域で河川が氾濫し、命の危険を訴える声が現地から相次いだ。

広西水文センターの観測では、左江、右江、鬱江など22本の河川に設置された32の水文観測所が警戒水位を超過。崇左市扶綏県の河川区間では最大で4.92メートル水位が上昇した。2日朝の時点でも14本の河川20カ所で水位が基準を大きく上回り、右江百色水利ハブでは2001年の運用開始以来最大規模の洪水が確認された。

こうした被害は、今年すでに広西各地で頻発している土砂災害や水害と連続性がある。たとえば、広西桂林では鉄砲水と土砂崩れで6人が死亡し2人が不明となる被害が発生している【→ 関連記事】。また、広西玉林でも台風1号の大雨による土石流で3人が死亡するなど、今年の広西は台風と集中豪雨の影響を繰り返し受けている【→ 関連記事】。

国慶節連休と観光への影響

被災の余波は国慶節の大型連休に直撃した。崇左市と百色市の複数の観光地は大雨と水位上昇で閉鎖され、観光客は宿泊予約を取り消さざるを得なかった。しかし一部では全額返金を拒否され、トラブルが発生している。広西旅遊協会が今年4月に施行した指導意見では、自然災害によるキャンセルは証明書類を提示すればホテルが全額返金すべきと定められており、観光業界の対応に批判も集まっている。

珠江水利委員会は、防汛(洪水防御)Ⅳ級の緊急対応を維持し、低地に住む住民の事前避難を地方政府に指示。会議では「鬱江本流や支流で洪水が下流へ進行し、ダムも高水位を維持している」と警戒感を示し、観光客の移動が活発な時期での防災の難しさが指摘された。

救済資金と防災体制

広西財政庁は崇左市と百色市を重点支援地域とし、自然災害救済資金1,000万元(約20億円)を緊急に拠出した。資金は避難者支援や応急救援に充てられる予定で、当局は「資金の監督を徹底し、住民の生命と財産を守る」と強調した。

一方で、観光需要が最も高まる連休中の災害発生は地域経済に深刻な打撃を与えている。旅行中止による損失や宿泊業の混乱は、広西全体の観光収入に影響を及ぼすと見られる。

台風21号「マットゥモ」の接近

さらに懸念されるのは次の台風だ。フィリピン東方で発生した熱帯擾乱「93W」が熱帯低気圧に発達し、その後台風21号「マットゥモ(Matmo)」へと変化。今後フィリピンを横断して南シナ海に入り、広東西部から海南東部沿岸に向かい、10月5日(日)にも広西周辺に上陸する可能性が高い。

中央気象台は、海南島、広東西南部、広西南部、雲南南部などで再び暴風雨が予測されていると発表した。住民の間では「まだ被害が収束しないうちに次の台風が来る」との不安が広がり、救援活動にも影響が出かねない。

防災専門家は「国慶節中は観光客が各地を移動し、景区に人が集中している。珠江流域の防洪体制は非常に厳しく複雑な状況にある」と指摘。住民や観光客に対し、最新の気象情報に注意し、早めの避難行動を取るよう呼びかけている。

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