中国調査船「向陽紅22号」が奄美大島沖の日本EEZに3度進入 日本政府が抗議、尖閣周辺では中国海警船

2025年10月1日朝、中国の海洋調査船「向陽紅22号」が鹿児島県奄美大島西方約395キロの日本排他的経済水域(EEZ)に進入し、海中に管のような物体を投下した。日本海上保安庁は巡視船で確認し、無線で活動停止を求めたが、調査は継続された。

同船はすでに9月28日に奄美大島西方約379キロのEEZ内で鋼索のような装置を海中に延ばしているのを初めて確認され、9月30日にも同海域に再び出没していた。日本側は3度目の進入に強い懸念を表明した。

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日本政府の抗議と中国側の沈黙

林芳正官房長官は9月29日の会見で、日本は中国政府に対し正式に抗議していると説明。「日本の同意なしに海洋科学調査を行うことは到底受け入れられない」と述べ、中国に即時停止を要求した。

しかし、中国政府はいまだ公式な反応を示していない。日本の抗議を無視する形で調査船が活動を継続している点が際立っている。

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「向陽紅22号」の性能と背景

公開資料によれば、「向陽紅22号」は中国初の3000トン級大型ブイ作業船で、2019年に中国自然資源部東海分局に引き渡された。直径10メートル、自重60トンの大型観測ブイを設置・回収可能で、75トン吊りの艉部A型クレーンやDP-2級動力定位システムを搭載。船体には低温高強度鋼を採用し、極寒環境でも稼働できる。これにより中国は深海・遠洋観測能力を拡張し、第一列島線外にまで監視範囲を広げている。


尖閣周辺で中国海警船が過去最長の317日航行

さらに、日本第11管区海上保安本部は10月1日、尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺の接続水域で中国海警局の艦船4隻を確認。航行は317日連続となり、過去最長記録を更新した。

艦船はいずれも機関砲を搭載し、そのうち「海警2307」は初めて尖閣周辺で探知された。日本側は領海侵入を警告し監視を続けた結果、艦船は相次いで退去した。

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中国本土の自媒体「島鏈縱覽」は、今回の争点はEEZにおける科学調査の許可権をどう解釈するかにあると指摘。国連海洋法条約は沿岸国に「資源の探査・開発・保全・管理」の権利を認めているが、科学調査については明確に規定していない。

日本は「沿岸国の明示的同意が必要」とする立場だが、中国は「条約に合致する合理的調査なら追加の許可は不要」と解釈。こうした法的認識の相違が、今回のような摩擦を繰り返す要因となっている。


今回の事案は、単なる海洋調査活動にとどまらず、東シナ海での主権・安全保障・資源管理をめぐる日中間の対立の象徴ともいえる。奄美大島近海での繰り返しの進入と尖閣周辺での海警船の活動が同時並行で起きていることから、緊張は一層高まる可能性がある。

出典

  1. 東網(香港)「華海洋調查船3度入日專屬經濟區 投放疑似管道」
     URL: https://hk.on.cc/hk/bkn/cnt/news/20251002/bkn-20251002100115687-1002_00822_001.html on.cc東網
  2. 中央社 CNA(臺灣)「不理日方抗議 中國海測船3度駛入日本經濟海域」
     URL: https://www.cna.com.tw/news/acn/202510010411.aspx cna.com.tw
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