鶴壁で有毒ガス事故、5人死亡の深刻事態

2025年9月29日午前、河南省鶴壁市山城区の化学メーカー、鶴鑫化工有限責任公司で有毒ガス事故が発生した。当局によれば5人が死亡、1人が重傷、2人が軽傷を負った。中国では化学工場の労働安全が長年問題視されており、今回の事案もその深刻さを改めて浮き彫りにした。
硫酸漏れが原因、有毒ガス発生のメカニズム
初期調査では、硫酸の中継タンクからの漏れが工場内の汚水槽に流入し、有毒ガスが発生したことが判明した。事故直後に応急対応が発動され、関係部門が救助と設備停止を実施。現場処理は専門家の指導の下で完了したが、根本的な安全対策の欠如が問題視されている。
2008年に設立された同社は、河南省最大のタウリン生産企業である。タウリンは食品添加物として乳児用粉ミルクやスポーツ飲料に利用され、製品は欧州や東南アジアなど20カ国以上に輸出されている。同社は300人以上の従業員と5億元規模の固定資産を有し、中国化学工場の中でも存在感が大きい。
過去の環境違反と労働安全の欠陥
同社はこれまで度重なる違反を指摘されてきた。2018年には違法排水で周辺の養殖池の魚約130トンを全滅させ、地域に甚大な被害を与えた。2023年には溶接作業で安全手続きを怠り罰金5万元を科され、2025年には消防資格者不足や硫酸タンク配管の標識欠落も問題化している。中国化学工場の安全管理の脆弱性を示す典型例といえる。
鶴壁市当局は国慶節と中秋節を前に化学企業への安全対策強化を呼びかけていた。しかし、その直後に事故が起きたことで、監督当局の実効性に疑問が投げかけられている。安全管理の強化が制度的に整備されても、現場で徹底されなければ労働安全は確保できない。
中国全土で続く有毒ガス事故
中国各地では同様の有毒ガス事故が頻発している。たとえば浙江省ではアルミ表面処理会社でガス漏れが発生し6人が死傷した事例がある【参考:新華社】。四川省でも養豚場の糞尿貯留池から有毒ガスが発生し7人が死亡するなど、農業現場でも労働安全上のリスクは高い。
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今後の課題:労働安全体制の強化
今回の事故は、中国化学工場における労働安全の欠陥を示した。監督強化だけでは不十分であり、企業が主体的に安全投資を行うことが不可欠だ。また、罰金や行政処分だけでなく、違反企業への厳格な市場退出措置も必要だろう。持続可能な産業発展には、事故を繰り返さない仕組みづくりが急務である。
出典
香港01「河南鶴壁一化工公司發生有害氣體中毒事件 致5死1重傷」
https://www.hk01.com/即時中國/60281119/河南鶴壁一化工公司發生有害氣體中毒事件-致5死1重傷。
界面新聞「河南鹤壁发生有害气体中毒事件致5死3伤,涉事公司曾因安全隐患多次被通报」
https://www.jiemian.com/article/13421702.html?utm_source=chatgpt.com
中国新聞網「河南鹤壁一化工公司发生有害气体中毒事件 已致5死3伤」
https://www.chinanews.com.cn/sh/2025/09-30/10492131.shtml?utm_source=chatgpt.com