米中首脳会談、複数の論点を抱えて始動
アメリカのドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席は9月19日夜に電話会談を行う予定だ。両首脳が直接協議するのは久しぶりであり、世界の市場や外交筋がその結果を固唾をのんで見守っている。
議題は一つに絞られていない。動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業存続が目立つ論点の一つだが、関税の行方や半導体規制も同時に重要テーマとして扱われている。
TikTokをめぐるせめぎ合い
トランプは訪英中に「TikTokは非常に価値がある。私はTikTokが好きだ。私の当選を助けてくれた」と強調し、習近平との通話で最終合意を探る意向を示した。検討されている案では、米国投資家が新設されるTikTok米法人の過半を保有し、オラクル(Oracle)が米国ユーザーデータを管理する。利用者はTikTokが開発中の新アプリに移行することも想定されている。
中国側も「基本的な枠組みに合意した」としつつ、「企業利益を犠牲にすることはない」と主張。香港紙や欧州メディアは、最終合意や首脳会談の実現には依然として不透明感が残ると報じている。
過去の動きを振り返ると、【TikTok問題を巡る中国の対応】でも指摘されているように、中国政府は交渉を国内産業保護の一環として位置づけている。
フィガロ紙が指摘する「長征の道」
欧州紙ル・フィガロは「トランプと習近平の会談は、曲折に満ちた長征のようだ」と論評した。習近平はプーチン露大統領や北朝鮮の金正恩総書記を北京で厚遇したが、米大統領に対しては紫禁城の門を開いていない。象徴的な演出があっても、関税や技術規制といった核心問題は解決されていないと同紙は警告する。
中国が打ち出したエヌビディア禁輸
TikTokと並んで注目を集めているのが、半導体をめぐる新たな動きだ。中国政府は米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)のAIチップについて、国内企業による購入停止を指示。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「中国がTikTok交渉の外側で、交渉材料を誇示した」と伝えた。
ただし効果は限定的との見方もある。3年前には中国市場がエヌビディア売上の2割を占めていたが、輸出規制強化で現在は6%に縮小。主要顧客は米国企業であり、中国の圧力の実効性は低いとされる。それでも、エヌビディアは中国向けにBlackwell技術を基盤とした新型半導体を開発しており、販売停止となれば短期的に中国がAI競争で不利になる可能性は否めない。
当サイトでも【関税を交渉材料とする中国の動き】を報じており、今回の措置が対米交渉と連動していることが理解できる。
関税と技術規制、根本的課題は残る
マドリードでは米財務長官スコット・ベッセントと中国の何立峰副首相(首席交渉代表)が交渉を行い、中国は「関税と輸出規制の全面撤廃」を要求。しかし、トランプ政権は譲歩を拒否し、「TikTok合意が成立しなければ首脳会談は開かれず、TikTokが米国で全面閉鎖される可能性もある」と強硬姿勢を示した。
結局、TikTokやエヌビディア問題は米中交渉の一部に過ぎず、根幹には関税とハイテク規制が横たわっている。ここに踏み込まない限り、両国関係の根本的改善は望めない。
今後の見通し
外交筋は「最短でも10月末の韓国・APEC首脳会議での会談にとどまる」と予測。11月に期限を迎える米中貿易休戦が延長されるか、あるいは破綻するかは、今回の協議次第だ。
星島頭條「據報今晚九時與習近平通話 特朗普:盼達成TikTok協議 或延長暫緩加關稅」星島頭條
法國世界報(RFI)「特习通话峰会有谱?」RFI+1