小鵬匯天のeVTOLが長春航空展で接触事故 商業化目前に安全性へ懸念

eVTOL接触事故の概要

2025年9月16日午後、吉林省長春市で開催された航空展の会場で、小鵬汽車傘下の小鵬匯天が開発する電動垂直離着陸機(eVTOL)2機が飛行中に接触し、1機が墜落した。もう1機は正常に着陸したが、損傷を受けた機体は着陸時に火災を起こした。

現場では少なくとも1人が負傷して病院に搬送されたが、命に別条はなかった。小鵬匯天は「双機編隊の演習中に間隔不足で接触が発生した」と説明している。関係部門はすでに現場処置を完了し、原因の調査を進めている。


低空経済と政策支援

eVTOLは純電動駆動、低騒音、整備容易性、安全性や環境性能などが評価され、ヘリコプターの代替手段として注目を集めている。中国政府は2024年に工業・情報化省、科学技術省、財政省、中国民用航空局が共同で「2024〜2030年通用航空装備応用計画」を策定し、低空経済分野の発展を戦略的に後押ししている。

この分野はドローン産業とも密接に関連しており、低空域の利用拡大は都市交通や物流に新たなビジネスチャンスをもたらすとされる(関連記事:中国で頻発するドローン関連事故と規制強化)。


小鵬匯天「陸地航母」の商業化進展

小鵬匯天は現在3タイプの飛行車を展開しており、その中核製品が分体式の「陸地航母」である。2024年11月に珠海航空展で初飛行に成功した唯一の実機で、公表価格は約200万元(約4,000万円)。

9月8日に開催されたミュンヘン国際モーターショーで、小鵬汽車の何小鵬董事長兼CEOは「12年間で約6億ドルを投じ、7世代の飛行器を開発してきた」と強調した。陸地航母は2025年10月にドバイで世界初飛行を予定しており、中国市場ではすでに5,000件近い受注を獲得している。正式納入は2026年下期を計画している。

さらに9月10日にはアラブ首長国連邦で特許飛行証を取得し、現地で有人飛行試験を開始した。同社創業者の趙德力総裁は「近く中東の街頭でも陸地航母を目にするようになる」と述べ、国際展開に意欲を示している。


事故が投げかける課題

事件のわずか6日前、小鵬匯天は「陸地航母」の大量受注(5,000台、前受金15億元=約300億円)を公表し、業界では商業化加速の象徴とされていた。こうした背景で発生した接触事故は、同社が、実態のない「PPT造車(パワーポイント車製造)」とのとの批判を払拭しつつあった矢先の出来事となり、ドローン関連産業「低空経済」全体に安全性の議論を呼び起こしている。


今後の展望

小鵬匯天はアジア最大の飛行車企業として、eVTOLの商業化を牽引してきた。しかし今回の事故により、安全基準や規制体制を再検証する必要性が浮き彫りになった。中国国内のみならず、UAEや欧州など海外展開を進める同社にとって、国際社会からの信頼を確保することは不可欠だ。

低空経済の発展は都市交通や物流の効率化に寄与すると期待される一方で、安全性を担保しなければ持続的な成長は難しい。今回の事故は、産業が直面する最大の課題を改めて突きつけた形となった。

出典

Gasgoo 汽車:長春航展小鵬匯天eVTOL相撞 墜毀原因調查中
on.cc 東網:傳飛行器相撞墜毀 小鵬匯天證機身受損起火
星島頭條:長春航展小鵬匯天飛行車相撞 小鵬:一機着陸時起火 人員安全

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