「預製菜」騒動が中国で拡大 西貝を著名人が批判で謝罪と改善策も食品安全スキャンダル拡大

著名実業家の批判から始まった「預製菜」論争

今回の騒動は、9月10日に中国の著名実業家・羅永浩氏が「西貝はほとんど預製菜で、しかも値段が高すぎる」とSNSで批判したことに端を発する。当初、西貝創業者の賈国竜は「100%預製菜は使っていない」と強く否定したが、批判は収まらず、連日の報道とネット世論に追い詰められていった。

中国国内では、外食産業における預製菜の普及が進む一方で、「本当に安全なのか」「添加物や保存料が過剰ではないか」といった懸念が高まっていた。羅永浩の発言は、こうした国民の潜在的な不安を一気に可視化する契機となった。


西貝の謝罪と9項目の改善策

9月15日、西貝はついに謝罪文を発表し、10月1日までに全国店舗で9項目の改善を実施すると明らかにした。その内容は以下の通りだ。

  • 全料理の調理油を非遺伝子組み換え大豆油に変更
  • 子ども向けメニュー(牛肉煮込みご飯、魚フライ、ハンバーグなど)を店舗での現場調理に切り替え
  • 羊肉串は店舗で切り分け・串打ち・焼き上げ
  • 豚肉煮込みや鶏肉料理もすべて店舗での調理に変更
  • 粥類はペースト利用をやめ、新鮮食材を使った煮込みに切り替え

西貝は声明で「顧客の期待と生産工程に隔たりがあった」と認め、「食品安全の底線は厳格に守ってきたが、より良い体験を提供するため現場加工へ移行する」と表明した。


厨房での衛生問題と消費者不信の拡大

しかし、謝罪発表の直前から複数の衛生問題が浮上し、西貝のイメージ悪化は止まらなかった。星島頭條などの報道によれば、ある店舗の冷蔵庫から「2024年製」の肉製品が発見された。従業員は「社員食堂用」と釈明したが、記者から「預製菜ではないか」と問うと回答を避けた。また、豚肉の漬け込み製品「封缸肉」も確認され、消費者からは「結局は加工済みではないか」と不信感が強まった。

さらにネット配信映像では、従業員が調理用レードルで排水口を清掃し、汚水の残渣をすくう場面が映し出された。西貝側は「規定違反であり、専用の清掃器具を使用する決まりがある」と釈明したが、衝撃は大きかった。

新浪財経の調査では、広州の店舗で「元宝」ブランドの遺伝子組み換え大豆油を使用していたことも発覚。報道後、店舗は「福臨門」の非遺伝子組み換え油に切り替えたが、消費者の信頼は簡単には戻らなかった。


国民の「食安不信」が爆発

羅永浩の批判は、単なる有名人と企業の争いにとどまらず、国民全体が抱える食品安全への不安を代弁するものとなった。SNSには「これは羅永浩と西貝の戦いではなく、国民の絶望の叫びだ」という書き込みが相次ぎ、「添加物や防腐剤にまみれた食事ばかりで、本来の味を忘れてしまった」との嘆きも広がった。

また、中国の評論メディア「黒噪音」は「問題は羅永浩ではなく、信頼できる公共の認証制度が欠如していることだ」と指摘した。本来であれば、一枚の証明書で信用を担保できるはずだが、現実では「その証書こそ最も信用されない」という皮肉な状況に陥っている。


度重なる食品安全スキャンダル

今回の預製菜騒動は、過去の食品安全スキャンダルと地続きである。例えば2025年には、甘粛省で幼稚園児233人が鉛中毒を起こす事件が発生した。また、杭州では飲用水の異臭騒動が発生し、多くの市民が安全な水を求めて殺到する事態となった【21:10†【安全】新まとめ.txt†L5-L7】。

さらに2024年には、油槽車が食用油と化学品を同じタンクで運搬していた「混載事件」が発覚し、社会に大きな衝撃を与えた。これは「男性が下水油を採取する様子が撮影され、当局に調査要望が出された四川の事件」とも共通する構造で、違法な油や食材が流通するリスクを浮き彫りにしている。

また、河南省開封市の肉そう菜店では工業塩が使われ、店主の妻が中毒死する事件が発生したことも記憶に新しい(記事はこちら)。食品加工や販売の現場で基本的な安全基準が軽視される事例は後を絶たない。

さらに、国際的に有名な外資系チェーンも例外ではない。例えばスターバックスでは、無錫市の2店舗が期限切れ食品を販売したとして休業命令を受けた(関連記事)。外資系企業でさえ規制をすり抜ける事実は、消費者の不信をより深刻にしている。


今後の行方と制度改革の必要性

羅永浩氏は13日に「一時休戦」と投稿したが、世論の怒りは収まっていない。西貝が打ち出した改善策が実際に実行されるかどうか、消費者は厳しく注視している。今回の預製菜スキャンダルは、西貝という一企業の問題にとどまらず、中国全体の食品安全管理体制に大きな疑問を投げかけている。

もし透明性の高い公共認証制度や厳格な監督体制が整わなければ、同様の問題は繰り返されるだろう。外食産業が国民の信頼を回復するには、現場調理の徹底や安全基準の明確化とともに、社会全体での制度的改革が求められている。


出典

香港01「遭羅永浩狙擊深陷預製菜風波 西貝道歉:多款菜式改為門店現煮」
https://www.hk01.com/%E5%A4%A7%E5%9C%8B%E5%B0%8F%E4%BA%8B/60276646/%E9%81%AD%E7%BE%85%E6%B0%B8%E6%B5%A9%E7%8B%99%E6%93%8A%E6%B7%B1%E9%99%B7%E9%A0%90%E8%A3%BD%E8%8F%9C%E9%A2%A8%E6%B3%A2-%E8%A5%BF%E8%B2%9D%E9%81%93%E6%AD%89-%E5%A4%9A%E6%AC%BE%E8%8F%9C%E5%BC%8F%E6%94%B9%E7%82%BA%E9%96%80%E5%BA%97%E7%8F%BE%E7%85%AE

德国之声(DW)「預製菜之争凸显中国食品安全痼疾」
https://www.dw.com/zh/%E9%A2%84%E5%88%B6%E8%8F%9C%E4%B9%8B%E4%BA%89%E5%87%B8%E6%98%BE%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E9%A3%9F%E5%93%81%E5%AE%89%E5%85%A8%E7%97%BC%E7%96%BE/a-73999789

星島頭條「預製菜風波被揭雪櫃藏2024年肉製品 西貝全部分店停參觀後廚」
https://www.stheadline.com/realtime-china/3499312/%E9%A0%90%E8%A3%BD%E8%8F%9C%E9%A2%A8%E6%B3%A2%E8%A2%AB%E6%8F%AD%E9%9B%AA%E6%AB%83%E8%97%8F2024%E5%B9%B4%E8%82%89%E8%A3%BD%E5%93%81-%E8%A5%BF%E8%B2%9D%E5%85%A8%E9%83%A8%E5%88%86%E5%BA%97%E5%81%9C%E5%8F%83%E8%A7%80%E5%BE%8C%E5%BB%9A

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