台海有事を想定した米中潜水艦の攻防 中国の急速な戦力拡張と米国の建造力不足が突きつける現実

中国潜水艦の進化と戦力強化

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、中国人民解放軍の潜水艦部隊は、静粛性・航続力・攻撃力で飛躍的に進歩し、太平洋における水中軍拡競争を加速させている。新型の095型原子力潜水艦は巡航ミサイル垂直発射能力を備え、専門家は「極めて静粛で、情勢を複雑化させる」と指摘する。通常動力の「元級」潜水艦はAIP技術により長時間潜航が可能になり、ステルス性能も大幅に改善された。

「九三」軍事パレードでは、潜水艦として運用できる無人潜航機や自律魚雷などの新装備も披露され、中国は有人艦艇と無人システムを組み合わせた戦力構築を急いでいる。


台海有事を想定したシナリオ

台湾有事が起きれば、中国は通常動力潜水艦で沿岸防衛を担い、原子力潜水艦を台湾支援に向かう米軍阻止に投入するとみられる。

米軍は潜水艦を用いて中国水上艦を攻撃し、潜水艦を追撃しつつ台湾海峡を封鎖することを想定する。さらに中国沿岸へのミサイル攻撃や南シナ海の補給線遮断も戦略の一部となり得る。これにより、日本、韓国、オーストラリア、シンガポール、さらには英国やフランスが巻き込まれ、戦時同盟の形を取る可能性が高い。


米国の技術優位と建造力不足

米国はバージニア級攻撃型潜水艦の音響性能やステルス性を改良し、火力を増強している。AIとの統合や無人システムの開発も進めており、技術的な優位性は依然として保持している。

しかし建造面では深刻な課題を抱える。初のコロンビア級弾道ミサイル潜水艦は2029年に引き渡し予定で、当初計画より2年遅れている。次世代のSSN(X)攻撃型潜水艦は2040年代にならないと建造が始まらない見通しだ。2023年度には16隻が整備中で、稼働率はおよそ67%にとどまった。

米議会予算局によれば、米国は年間1.2隻しか攻撃型潜水艦を建造できず、AUKUS協定に基づくオーストラリアへの供与を含めれば2.33隻が必要とされる。建造能力不足が米国と同盟国の抑止力を圧迫している現実は否めない。


インド太平洋で進む水中軍拡競争

中国は世界最大の造船能力を背景に潜水艦の大量建造を推進し、通常動力潜水艦の開発にも注力している。米国は技術で優位を維持するが、造艦遅延が抑止力の実効性を揺るがす構図となっている。インド太平洋の安全保障は、技術革新と建造能力の両面での強化を待ったなしの課題として突きつけられている。


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