【特集】中国製モバイルバッテリー問題 発火事故から経営危機へ

 725年8月3日特集中国製モバイルバッテリーを巡り、発火事故を発端とした大規模リコールと企業経営の危機が明らかになっている。香港・台湾・中国本土の複数メディアは、低価格戦略と品質管理の甘さが根本原因であると報じている。
発火事故が相次ぐ
 2025年3月20日、香港航空の福州発香港行き便で、乗客の手荷物に入っていたモバイルバッテリーが発火し、客室内が煙に包まれた。乗員の迅速な対応によりけが人はなかったが、航空機は緊急着陸した。
 また、中国国内の高速バスでもモバイルバッテリーが発火したとみられる火災が発生。乗客が軽傷を負い、車両は全焼した。
航空関連だけで火災15件
 中国・深圳市場監督局によれば、発表2025年上半期(1~6月)、中国民航領域では充電宝(モバイルバッテリー)の発火・煙発生による事故が15件発生し、前年同期比で約2倍に増加した。こうした事故は民航局が航空会社に早期警告を出す契機となり、持ち込み規制を強化する流れを促した。
 2025年6月中旬から下旬にかけて、北京の複数の大学が相次いで安全警告を発し、有名ブランドのモバイルバッテリーに充電中の異常な発熱現象や高い爆発リスクがあると指摘し、学生や教職員に直ちに使用を中止するよう呼びかけた
大規模リコールへ発展
 相次ぐ事故を受け、中国・深センに本社を置くバッテリーブランド「羅馬仕(ROMOSS)」は、2023年6月から2024年7月に製造した3機種・約49万個を自主回収すると発表した。返金や新品交換を行い、航空当局や地方政府の監督下で対応を進めている。
 さらに、ROMOSSとアンカー(ANKER)は江蘇省の電池メーカー安普瑞斯(Amprius)が試験未実施の隔膜材料を使用していたことが判明したため、計236万個以上の製品を追加リコールした。一部空港では両ブランド製品の持ち込み禁止措置もとられた。
サプライチェーン管理が失敗
 複数の情報筋によれば、今回のリコールはある大手電池セルサプライヤーの委託先工場が、隔膜材料を無断で変更したことが原因とされる。モバイルバッテリーの充放電中にリチウムデンドライト(枝状結晶)が隔膜を突き破り、短絡や過熱・燃焼につながった。
 この電池セルサプライヤーは一部生産業務を外部に委託していたが、生産工程や原材料変更の監督を厳格に行わず、その結果、不合格な電池セルが市場に流入し、数十ブランドに影響を及ぼし、今回の業界全体を巻き込む危機となった。
 電池セルはモバイルバッテリーの中核部品であり、最も重要な安全部品でもある。しかし、多くの電池セルメーカーはコスト削減のため材料使用を抑制し、安全リスクが高まっている。また、使用側のモバイルバッテリーメーカーも調達先の製造プロセスや製品品質を継続的かつ有効に管理できておらず、生産段階の問題を早期に発見できないことが、安全上の欠陥を持つ製品が市場に流通する要因となっている。
◇出典
https://www.sohu.com/a/912897650_120277780?utm_source=chatgpt.com
経営危機に直面するROMOSS
 大規模リコールに伴う資金流出は深刻で、ROMOSSの返金申請は18万件に達し、2025年7月7日から6か月間、主要工場を停止、全従業員を休業とする事態に追い込まれた。さらに主要幹部5人が所在不明となり、サプライヤーへの支払い遅延や給与未払いが発生するなど、経営は混迷を深めている。
 中国メディアのIT之家によれば、ROMOSSは7月15日には「運営チーム主要メンバーは勤務しており、リコールサービスは長期的に有効である」との声明を発表した。
職員わずか20人、在庫5000万個
 一方、ネットメディアがが7月21日に深センのROMOSS本社を訪れたところ、現在在籍しているのは20人余りで、在庫は5000万に上ることが分かった。
 本社ビルの前には給与や代金の支払いを求める従業員や取引先が多数集まっているという。従業員の話では、会社の経営陣はすでに「消えた」状態であり、法人代表は3カ月の間に3回変更された。「3月に問題が起きて以来、社長の姿を見たことがない」と証言した。 ROMOSSは事実上、経営破たんしており、実際のリコールに応じられるかは不明。危険なモバイルバッテリーが大量に市場に出回る恐れもある。
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