
中国の対日レアアース磁石輸出量が急減
中国税関総署が2026年6月20日に公表した貿易統計によると、2026年5月の中国から日本向けレアアース磁石の輸出量は123トンとなり、4月の188トンから34.6%減少した。この輸出量は2025年5月以来の最低水準であり、3カ月連続で200トンを下回る結果となった。中国が2026年1月から実施している軍民両用物資の対日輸出規制強化の影響が鮮明になっている。中国メディアの新浪財経などもこれを伝えている。
日本向けの落ち込み幅は、世界全体への輸出動向と比較して突出している。5月における中国のレアアース磁石の輸出総量は世界全体で前月比7.7%減であった。また、米国向けの輸出減少幅も7.7%減にとどまっている。これらと比較して、日本向けのみが34.6%減と大幅に減少しており、その突出した減少ぶりが際立つ結果となった。
軍民両用物資の指定と対日規制の具体化
中国政府は2026年1月6日、日本の軍事利用や軍事力向上につながる軍民両用物資の輸出を禁止すると発表した。この輸出禁止対象には、レアアース、ガリウム、ゲルマニウム、特殊金属などが含まれている。さらに中国政府は2026年2月24日、三菱造船など20の日本企業・団体を輸出管理対象に指定し、別の20団体を監視対象リストに加える措置をとった。
これらの規制による影響は、貿易統計の具体的な数字としてすでに現れている。2026年3月の中国の対日レアアース輸出は前年同月比で88%減少した。続く4月も前年同月比82%減と大幅な落ち込みが続いている。電気自動車(EV)用モーターや産業機械向け高性能磁石に使用される重希土類のジスプロシウム(Dy)とテルビウム(Tb)は、1月以降、対日輸出が事実上ゼロの動態が継続している。さらに、半導体製造装置に欠かせないイットリウムの対日輸出も1〜4月に90%以上減少した。超硬工具の原料となる炭化タングステンにいたっては、2月から5月まで4カ月連続で対日輸出実績がゼロとなっている。
高い中国依存度と日本の産業界に広がる懸念
レアアース磁石はレアアースの代表的な用途の一つであり、電気自動車(EV)、風力発電設備、産業用モーターなどに幅広く使用されている。磁石の性能向上に不可欠なジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)が輸出管理対象となったことで、高性能磁石そのものの輸出許可取得も難しくなっているとの見方が出ている。
日本はレアアースの輸入量の66%を中国に依存しており、中重希土類についてはほぼ全面的に中国からの調達に頼っている。個別の品目では、酸化ランタンの対中依存度が100%、酸化イットリウムは94%に達する。日本政府は南鳥島周辺海域での深海レアアース開発や、オーストラリアのライナス社からの調達拡大を進めている。しかし、世界の重希土類高純度精製能力の約92%が中国に集中しているため、業界内では短期間で中国依存を解消することは困難であるとの見方が強い。自動車、電子部品、半導体関連産業のサプライチェーンへの影響が懸念される。
中国商務部はこれまで「輸出管理は民生用途には影響しない」と説明を続けている。しかし、中国日本商会が2026年6月11日に公表した白書では、一部の民生向け製品取引にも実際に影響が生じていると指摘。輸出許可基準や審査手続きの透明化を求める要望を出している。これにより、トヨタやホンダ、電子材料メーカーなどの間では調達への懸念が高まっている。
日中関係の悪化と輸出規制の長期化・制度化
背景には日中関係の悪化が存在する。中国側は、日本の高市早苗首相が2025年11月の国会答弁で台湾有事に言及したことなどに対して強く反発している。その後、中国側は観光、文化交流、戦略物資輸出など複数の分野で対日圧力を強めてきた。中国政府は2026年5月25日にも、「日本の軍事利用や軍事力向上につながる軍民両用物資の輸出を法令に基づいて制限している」と改めて説明している。
中国社会科学院日本研究所の分析によると、今回の中国による輸出規制は、2010年に発生した約7週間に及んだ対日レアアース輸出停止措置とは異なっている。今回は「長期化・制度化」の傾向を示しているという。全面禁輸という形態ではないものの、輸出許可制度を通じて日本の製造業に対して継続的な圧力をかける構図が鮮明になっている。
出典 中国税関総署 貿易統計 経済統計情報 東方日報 ニュース 中央通訊社 ニュース
