
武漢の小村で「がん村」疑惑 住民585人中62人が発症
中国湖北省武漢市新洲区の自然村「黄土坡村」で、戸籍人口585人のうち少なくとも62人が過去10数年間にがんや白血病を発症していたことが明らかになり、中国国内で大きな波紋を広げている。
患者の多くは50歳以下の働き盛り世代で、2015年以降だけでも34人が発病し、19人が死亡した。人口規模からみると、住民の1割超が深刻な疾病を患った計算となり、中国メディアでも「異常な発症率」として注目されている。
村民らは、村の入り口にある「昌盛泡花鹼(ケイ酸ナトリウム)工場」による長年の違法排水が原因だと訴えている。泡花鹼は、洗剤や接着剤、建材などに使用されるケイ酸ナトリウムの中国語名称で、製造工程では大量のアルカリ性廃水やシリカ粉じんが発生する。
中国メディアによると、問題の工場は1986年に建設されたが、長年にわたり環境影響評価や排水許可を取得していなかったとされる。工場は村の住宅地から道路1本隔てただけの位置にあり、村民は長年にわたり粉じんや悪臭に悩まされてきたという。
さらに、工場からは「しょうゆ色」の汚水が農地や池へ流れ込み、魚やエビ、家畜の中毒死が発生したとの証言も出ている。排水溝周辺では「サツマイモが発芽しない」「雑草が枯死する」など、農作物への異常も確認されたとしている。
地下水汚染疑惑 マンガン基準超えも判明
黄土坡村では2016年まで水道が整備されておらず、多くの村民が地下水を飲用していた。報道によると、工場停止から2年後でも地下水から基準値の3倍を超えるマンガンが検出されたという。
第三者機関による検査では、汚染水域の総アルカリ度が29214mg/Lに達し、測定機器の上限値を10倍以上超えていたとの情報も浮上している。
村民側は、こうした汚染が長年にわたり健康被害を引き起こしてきたと主張しているが、現時点で工場排水と発病との因果関係は正式には確認されていない。
一方、武漢市共産党委員会と武漢市政府は19日、合同調査チームを設置したと発表した。調査チームは、村民の健康被害や環境汚染、生産停止状況などについて全面的かつ詳細な調査を進めるとしている。
中国では過去にも、工場や鉱山周辺で住民のがん発症率が異常に高まる「がん村」が社会問題化してきた。特に地下水汚染や重金属汚染は長期残留性が強く、操業停止後も数10年単位で影響が続くケースがあるとされる。
地方環境当局に批判 「汚染なし」説明に疑念
問題をさらに大きくしているのが、地元当局の対応だ。
新洲区生態環境分局はこれまで、「汚染はない」「工場はすでに操業停止している」と説明してきた。しかし村民側は、地元環境当局が検査前に工場側へ連絡し、事前に排水口を塞ぐよう通知していたと工場経営者自身が認めたと主張している。
中国メディア「紅網」は評論記事で、「操業停止していることは、過去に汚染が存在しなかったことを意味しない」と批判した。
さらに、「汚染はない」とする行政側の説明についても、地下水、土壌、農作物に対する多地点・多項目の検査や、第三者による疫学調査など、科学的根拠が不足していると指摘している。
今回の問題では、単なる工場排水問題にとどまらず、中国地方政府の環境監督体制や情報公開の透明性そのものが問われる事態となっている。
近年、中国政府は「生態文明建設」を掲げ、環境規制を強化しているが、地方では依然として経済優先姿勢が根強いとの指摘も多い。特に地方中小工場では、環境許認可や排水処理が不十分なまま長年操業しているケースも残っている。
世論では、今回の合同調査について、①工場の操業履歴や排水記録を含む徹底調査、②調査過程の全面公開、③違法排水や監督責任が確認された場合の厳格な責任追及――を求める声が強まっている。
人口585人の小村で住民の1割超ががんや白血病を発症した今回の問題は、中国における環境汚染と地方行政の監督体制のあり方を問う重大事案として注目を集めている。
[出典]
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