米、イラン「影の銀行」に新制裁 中国「ティーポット製油所」も標的、首脳会談前の牽制強まる

Large oil tanker at a busy port, with four tugboats alongside and storage tanks in the background.

米、イラン「影の銀行」に新制裁 米中首脳会談前に牽制

米財務省は28日、イランの「シャドーバンキング(影の銀行)」に関与した35の団体と個人に制裁を科すと発表した。5月中旬に予定されているトランプ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談(川習会)を前に、イラン産原油の主要な買い手である中国の独立系製油所(ティーポット製油所)への圧力を極限まで強めている。ドイツの国際公共放送ドイチェ・ベレ(DW)などが伝えた。

制裁対象は、数百億ドル規模の制裁回避やテロ支援に関わる資金移動を支援したネットワーク。米財務省は特に、山東省などに拠点を置くティーポット製油所が、紛争下で封鎖状態にあるホルムズ海峡の安全通過と引き換えに、イラン政府やイスラム革命防衛隊(IRGC)へ「通行料」を支払っていると指摘。金融機関に対し、これら製油所との取引には二次的制裁のリスクがあると異例の警告を発した。

既に24日には、1日40万バレルの処理能力を持つ大手、恒力石化(遼寧省大連市)が米国の制裁対象となり、約3億4,000万ドルの暗号資産が凍結された。米国の制裁により一部の製油所は購入を控える動きを見せているが、中国は依然としてイランの石油輸出の8割以上を占めている。これに対し中国商務省は「断固として必要な措置を講じる」と猛反発しており、首脳会談を前にエネルギー地政学を巡る米中の緊張は最高潮に達している。

「金融の生命線」遮断狙う シャドーバンキングの実態

米財務省外国資産管理局(OFAC)の分析によると、今回標的となったイランのシャドーバンキング・システムは、武装勢力やテロ活動を支える「金融の生命線」として機能している。これらのネットワークは、数百におよぶダミー会社やペーパーカンパニーを駆使し、国際的な金融監視網を潜り抜けて石油販売代金を回収している。

スコット・ベセント財務長官は声明で、「イランの影の銀行システムは、世界の貿易を混乱させ、中東での暴力を激化させる活動を可能にしている」と指弾した。制裁リストには、イランのShahr銀行と連携して石油販売を仲介したFarab Soroush Afagh Qeshm社とその幹部、さらに最高指導者ハメネイ師の管理下にあるSina銀行や、軍を背景に持つSepah銀行にサービスを提供していた複数の代理店が含まれた。

これらの中間業者は、アジアやアラブ首長国連邦(UAE)などの第三国を経由して資金を洗浄し、ミサイルや武器システムの機密部品調達に充てているとされる。ワシントンはこれらのルートを物理的・金融的に封鎖することで、テヘランの戦争継続能力を削ぐ構えだ。

窮地に立つ中国「ティーポット」製油所 産業構造への打撃

今回の制裁で直接的な打撃を受けているのが、中国の石油精製能力の約3分の1を占める独立系民営製油所、通称「ティーポット(地煉)」である。大手国有石油企業が制裁リスクを嫌ってイラン産原油の直接取引を控える中、これらの独立系業者は割安なイラン産原油を「金融上のリスク」を承知で調達し、高い利益率を維持してきた。

しかし、米財務省は今回、金融機関への警告を通じて「二次的制裁」の威嚇を強めている。具体的には、ティーポット製油所が米国の金融システムを利用してドル決済を行ったり、米国製の商品を調達したりすることを事実上不可能にする構えだ。既に制裁を受けた恒力石化(大連)は、「制裁範囲外の原油しか扱っていない」と反論しているが、米当局はタンカーのAIS(自動識別装置)のオフや船越し荷役(STS)、書類偽造といった欺瞞行為を徹底的に追跡している。

リスク顧問会社オブシディアン・リスク・アドバイザーズのブレット・エリクソン氏は、「中国の大手銀行を直接標的にしない限り致命傷にはならないが、ティーポット製油所への圧力は中国のエネルギー供給網に混乱を招く」と指摘する。製油所側は今後、異なる名義での販売や精製製品のロンダリングを余儀なくされるが、コスト増は避けられない見通しだ。

首脳会談に向けた「外交的武器」 激化する米中対立

一連の制裁実施のタイミングは、5月中旬に予定される「川習会(トランプ・習近平会談)」を強く意識したものだ。トランプ政権は、イランの核計画議論を先送りしようとするテヘランの外交提案を拒絶しており、その背後でイラン産原油を買い支える中国を叩くことで、首脳会談での交渉カードを有利に進める狙いがある。

2025年2月以降、OFACはイラン関連の個人や船舶に対し約1,000件の制裁を発動してきた。ワシントンは、北京がイランへの経済的支援を停止しない限り、中国の金融機関への直接制裁も辞さない構えをチラつかせている。

対する中国側は「一方的な制裁とロングアーム・ジャリスディクション(拡大管轄)の乱用」に対し、猛烈な反対を繰り返している。中国商務省は、自国企業の合法的権利を維持するために「必要な措置」を講じると表明。これには、中国独自の「信頼できないエンティティ・リスト」の活用や、対抗措置としての輸出規制が含まれる可能性がある。

エネルギー安全保障を巡る両国の激突は、中東の紛争と相まって、世界のサプライチェーンをさらに不透明なものにしている。首脳会談を目前に控え、経済戦と外交戦の境界線は消失し、地政学リスクはかつてない水準に達している。

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