恒大・許家印被告の初公判が深センで開廷 巨額詐欺と贈賄を認める 中国不動産バブル崩壊の象徴

恒大の許被告の初公判 巨額詐欺容疑など認める

広東省深セン市中級人民法院(地裁)は13日から14日にかけて、巨額の詐欺罪などに問われた、経営再建中の中国不動産開発大手、中国恒大集団の創業者、許家印被告の初公判を開いた。検察側は詐欺や違法な預金集め、贈賄など複数の罪で起訴した。許被告は法廷で罪を認め、悔悟の念を表明した。判決は後日言い渡される。香港メディアの星島日報などが伝えた。

許被告は河南省の貧困家庭出身。1歳で母を亡くし、農村での過酷な生活を経て、改革開放の波に乗り1996年に恒大を設立した。不動産開発で急成長を遂げ、2017年には資産2900億元(約6兆円)で中国一の資産家に登り詰めた。しかし、負債に依存するレバレッジ経営が裏目に出て2021年に債務危機に陥り、各地でマンションの建設中断が相次いだ。許被告は2023年9月に当局へ連行されていた。

起訴状によると、恒大集団は組織的に不法な資金調達や証券の不正発行を行い、許被告個人も業務上横領や資金の違法運用に関与したとされる。当局は既に許被告に対し、証券市場への終身参入禁止などの行政罰を言い渡している。かつての「経済発展の象徴」が法廷で断罪される姿は、中国不動産バブル崩壊の象徴的な局面とみられている。

貧困から頂点、そして地獄へ 転落した「立志伝」

許家印の半生は、まさに中国経済の急成長と崩壊を体現している。河南省の農村でカビの生えた饅頭を食べ、糞尿汲みなどの重労働に従事していた少年が、改革開放という歴史の転換点を捉えて深センへと南下し、一代で世界500強企業のオーナーとなった物語は、かつて多くの中国人に成功への夢を抱かせた。

恒大は単なる不動産会社に留まらず、広州恒大サッカークラブの運営や電気自動車(EV)事業への進出、さらには中医学やミネラルウォーター事業など、あらゆる分野に触手を伸ばした。しかし、その成長の原動力となったのは、銀行からの過度な融資と、一般投資家から「元本保証」を謳って集めた多額の資金であった。これが今回の公判で問われている「違法な資金集め(無許可の預金受入)」の実態である。

中国政府が2020年に導入した不動産融資規制「三つの赤線(スリー・レッドラインズ)」により、資金繰りが一気に悪化した恒大は、2021年に事実上のデフォルト(債務不履行)に陥った。その後、各地で代金を支払い済みながら住宅が完成しない「爛尾楼(ランウェイロウ)」問題が社会問題化し、購入者による抗議デモが頻発。政権にとっての安定を揺るがす重大なリスクとなったことが、今回の刑事訴追を決定づけたといえる。

不動産バブル崩壊の断罪と産業構造の変革

今回の公判は、単なる一企業の不正を裁く場ではない。習近平指導部が進める「共同富裕」の旗印の下、無秩序な資本の拡張を許さないという強い意志を示す象徴的な政治イベントでもある。不動産が国内総生産(GDP)の約3割を占めてきた中国の産業構造は、恒大の崩壊をもって歴史的な転換点を迎えた。

中国証券監督管理委員会は既に、恒大地産に対して41.75億元という巨額の罰金を科しているが、今回の刑事裁判ではより厳しい司法の判断が下される見通しだ。許被告が法廷で全面的に罪を認めた背景には、当局との何らかの取引や、情状酌量を求める意図があるとみられるが、失われた数兆円規模の資産や、未完成の住宅に取り残された何十万人もの市民の怒りが鎮まるわけではない。

今後、中国の不動産市場は国有企業主導の再編が加速し、過度なレバレッジに依存した民間のデベロッパーは淘汰されていくことになる。許家印被告の没落は、土地神話に依拠した中国型成長モデルの終焉を告げると同時に、不動産バブルの後始末という極めて困難な課題を中国経済に突きつけている。

[出典] ・恒大許家印︱窮小子2萬元起家變中國首富靠 兒時食發霉饅頭試過掏糞生活(星島頭條) ・恒大案一審深圳開庭 涉集資詐騙、行賄多罪 許家印當庭認罪悔罪(香港01) ・恆大欺詐案深圳開審 許家印當庭認罪擇期宣判(中央社)

[関連情報] ・恒大問題の余波、不動産企業の資金繰り悪化中国各地で住宅販売が減速、不動産需要に陰り中国不動産大手の再編進む、国有企業が主導住宅価格の下落続く、消費者心理に影響銀行の不動産融資姿勢に変化、リスク管理強化

#許家印 #恒大集団 #中国不動産 #初公判 #深セン #中国経済

タイトルとURLをコピーしました