中国軍需大手に粛清の嵐 「殲-20」開発者らアカデミー会員10人を除名

中国軍需大手に汚職摘発の嵐 最新鋭戦闘機の開発者も

中国軍内で続く汚職摘発の嵐が、軍需産業を担う中央企業(国有企業)や、国内最高の研究機関の「両院」(中国科学院、中国工程院)へ波及している。直近では、最新鋭ステルス戦闘機「殲-20(J-20)」の総設計師として知られる楊偉氏が、中国科学院の会員名簿から除名されたことが判明した。

18日付の香港紙・明報などによると、共産党第20回全国代表大会(20大)以降、少なくとも10人の両院院士(アカデミー会員)が除名処分を受けた。楊氏は中国航空工業集団の副総経理を務め、中国の戦闘機技術を世界水準に引き上げた立役者だが、同社公式サイトからは既に経歴が抹消されている。数日前には呉曼青氏(元中国電子科技集団総経理)、趙憲庚氏(元工程院副院長)、魏毅寅氏(元中国航天科工集団副総経理)ら、レーダーや核兵器、ミサイル制御の権威も相次いで除名された。対象は核、宇宙、航空、艦船など軍需全域の主要10社に及び、過去3年の摘発で幹部層は事実上、壊滅状態にある。終身名誉職とされる「院士」の称号剥奪は、習近平政権による軍と軍需産業への徹底した浄化作戦を象徴している。

壊滅的な「軍工央企」の首脳陣 技術エリートにも及ぶ粛清

今回の除名劇で最も衝撃を与えたのは、中国航空工業界の象徴的数字である楊偉氏の失脚だ。楊氏は、米国に次いで世界で2番目に第4世代(中国基準。世界基準では第5世代)ステルス戦闘機を実戦配備させた「殲-20」の総設計師であり、第19期中央候補委員も務めた人物だ。しかし、2025年1月の時点で既に所属組織の公式サイトから名前が消えており、今回の「院士」称号の剥奪によって、政治的・社会的な地位が完全に失われたことが裏付けられた。

この反腐敗の嵐は、単なる組織末端の汚職摘発にとどまらず、中国の国防を支える軍需産業の中核10社すべてに波及している。中国核工業、中国航天科技、中国航天科工、中国航空工業、中国航空エンジン、中国船舶、中国兵器工業、中国兵器装備、中国電子科技、中国電子情報産業の各トップ層が、過去3年間で次々と調査対象となり、事実上の「集団沈没」と呼べる事態に陥っている。

特に注目すべきは、除名された人物の専門性の高さだ。呉曼青氏はレーダー技術、趙憲庚氏は核兵器工学、魏毅寅氏はミサイル誘導の第一人者である。軍事技術の発展に不可欠なこれら「両院院士」が、技術的な功績を保護されることなく排除されている点は、習近平指導部が技術的継続性よりも、政治的忠誠と腐敗撲滅を優先している証左といえる。

習近平政権の政策意図と産業構造への打撃

今回の徹底した浄化作戦の背景には、巨額の予算が投じられる軍需調達における利権構造の打破がある。中国の軍需産業は「中央企業(央企)」と呼ばれる巨大国有企業が独占しており、研究開発から製造、納入までが閉鎖的なコミュニティで行われる。この産業構造が、不透明な資金流用やリベートの温床となってきた。

特にロケット軍を起点とした一連の粛清は、核兵器やミサイルの開発・配備における深刻な欠陥や不正が発覚したことが引き金になったとの見方が強い。技術の頂点に立つ「院士」たちが、企業経営の要職を兼任することで、技術的知見を背景とした強大な権力を持ち、それが汚職の深刻化を招いたという側面もある。

産業界への影響は甚大だ。次世代兵器の開発を主導するトップランナーたちが一斉に姿を消したことで、中国が掲げる「軍事強国」への道のりに遅れが生じる可能性は否定できない。しかし、習近平国家主席にとっては、軍と軍需産業が一体となった独立王国を解体し、党による絶対的な指導権を確立することこそが、長期政権の安定に向けた最優先課題となっている。

終身名誉とされる「院士」の称号剥奪は、学術界に対する強力な警告でもある。軍工産業と科学技術の癒着を断ち切り、新たな忠誠を誓う世代への交代を強制的に進める狙いがある。国際的な軍事バランスにも影響を与えかねないこの「軍工大粛清」は、中国の国防政策のあり方を根本から変容させようとしている。

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