
中国海運大手が予約停止 ホルムズ海峡の航行制限で
米軍とイスラエル軍によるイラン攻撃に伴う中東情勢の緊迫を受け、世界最大級の船団を運航する中国国有の海運大手、中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)は4日、ホルムズ海峡の航行制限を理由に、同地域を往来する海運サービスと新規予約を即時停止すると発表した。中国メディアの界面新聞が伝えた。
イスラエルがイランの首都テヘランを攻撃する中、イラン側は世界のエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡を完全に掌握したと主張。上海に拠点を置く同社は、最新のリスク評価に基づき、貨物輸送の安全確保と運航の安定維持を優先し、デンマーク大手のAPモラー・マースクなどに続く形で運航停止を決定した。
対象はアラブ首長国連邦(UAE)、カタール、バーレーン、イラク、クウェート、サウジアラビアの大部分。ただし、同海峡を経由せず到達可能なサウジアラビアのジッダやUAEのフジャイラなどは除外される。すでに船積みされた貨物については、代替の荷揚港選定を含めた対応策を検討中だ。
同社は2024年末時点で、総合運力1億3000万載貨重量トン(1535隻)を誇る世界最大の海運グループ。エネルギー輸送を担う巨大タンカー船団の運航停止は、世界の物流網やエネルギー供給に深刻な影響を及ぼす可能性がある。
紛争激化とホルムズ海峡の封鎖リスク
今回の決定の背景には、イスラエルによるテヘラン攻撃と、それに対するイランの強硬な反応がある。イランのイスラム革命防衛隊が「ホルムズ海峡を完全に支配下に置いた」と宣言したことは、世界の石油輸送の約3割が通過する重要航路が物理的に封鎖されるリスクを現実のものとした。
中遠海運集運(COSCO SHIPPING Lines)が発表した「中東地区情勢更新サービス提示No.2」によれば、今回の措置は「貨物輸送の安全および航運運営の安定性を最大程度保障するため」の苦渋の決断であるという。すでにマースクやMSCといった欧州海運大手が同海域の運航停止を相次いで発表しており、中国の国有最大手であるCOSCOがこれに追随したことは、民間船舶の安全航行がもはや不可能に近いレベルまで悪化したことを意味している。
特に中国にとって、ホルムズ海峡は「生命線」に他ならない。中国は原油輸入の約半分を中東地域に依存しており、その大部分が同海峡を通過する。国有企業であるCOSCOが運航を停止することは、単なる商取引の中断に留まらず、国家的なエネルギー安全保障戦略の転換を余儀なくされる事態といえる。
産業構造と国際物流への深刻な打撃
COSCOの産業構造は多岐にわたり、コンテナ船隊だけでなく、バラ積み船、油・ガス船、特殊貨物船の各部門において世界首位の運力を誇る。2024年末時点のデータによれば、コンテナ船隊だけでも338.8万TEU(542隻)という巨大な規模を維持している。この巨大な供給能力が一時的にでも市場から失われることは、世界的な運賃の高騰やサプライチェーンの断絶を招く。
特に影響を強く受けるのは、UAEのドバイやカタールのドーハといった湾岸諸国の主要港だ。これらの港はホルムズ海峡の内側に位置しており、COSCOの新規予約停止によって物資の出入りが完全に遮断される恐れがある。一方で、海峡外に位置するサウジアラビアのジッダやUAEのフジャイラは今回の停止対象から除外されており、今後はこれらの港を拠点とした陸路や代替航路へのシフトが加速するとみられる。
また、COSCOは現在船積みされている貨物について、代替卸し港の選定を急いでいる。これには莫大な追加コストと時間がかかるが、提携する「オーシャン・アライアンス」内での調整や、中国政府の外交的な関与を含めた対応が必要となるだろう。
今回の事態は、中国が進めてきた「一帯一路」構想の脆弱性をも露呈させた。中東の安定を前提とした物流ネットワークが、軍事衝突という物理的な障壁によって分断されたことで、中国企業の海外進出戦略やエネルギー確保のあり方は根本的な再考を迫られている。米イの軍事衝突が長期化すれば、世界経済全体が未曾有の物流混乱に陥ることは避けられない。
[出典]
[関連情報]
- 中国経済に直撃 石油供給と「一帯一路」戦略に深刻な打撃
- 米イスラエルのイラン攻撃、中国の影響力に打撃 エネルギー確保も困難に
- イランが中国製超音速ミサイル購入か 米軍集結で緊張最高潮
- 米のイラン核施設攻撃、中国が非難声明
[ #中国遠洋海運集団 #COSCO #ホルムズ海峡 #中東情勢 #エネルギー安全保障 #サプライチェーン

