8年ぶりの英首相訪中、スターマー政権が狙う対中リセットと経済実務外交の行方

対中関係の「リセット」と経済実務への回帰

英国のスターマー首相は1月27日夜、中国および日本への歴訪に出発する。英国首相による訪中は2018年のメイ元首相以来、約8年ぶりの節目となる。今回の訪中は、労働党政府が選挙公約として掲げてきた「対中関係のリセット」を具体化する重要な一歩であり、近年、香港問題や新型コロナウイルス、スパイ疑惑などで極度に悪化した両国関係の緊張緩和を狙ったものだ。

スターマー首相は出発に先立つブルームバーグのインタビューで、「世界第2位の経済大国であり、ビジネスチャンスが存在する中国を無視することは賢明ではない」と強調した。同政権は「現実から目を背ける」のではなく、経済的利益を追求する実務的なアプローチを優先する方針だ。この背景には、英国政府が訪中に先立ち、ロンドン中心部での中国「スーパー大使館」建設を承認するなど、外交再起動に向けた実利的な譲歩も含まれている。

米中「二者択一」の否定と戦略的バランス

スターマー首相の外交戦略で特筆すべきは、米国と中国の間での「陣営選択」を明確に拒絶している点だ。首相は「最親密な同盟国である米国との関係を損なうことなく、中国との関係を発展させられる」と断言し、対米・対中アプローチにおいて一方を立てれば一方が犠牲になるというトレードオフの考え方を否定した。

これは、今月初めに訪中したカナダのカーニー首相がトランプ米大統領から関税の脅威を引き出した状況とは対照的なアプローチを狙ったものだ。トランプ政権が欧州諸国への関税圧力を強め、NATOの役割に疑問を呈するなどトランスアトランティック関係が動揺する中、スターマー首相は英国独自の「コモンセンス(常識)」に基づいた成熟した関係性をトランプ氏と維持しつつ、アジアでの経済的橋頭堡を確保しようとしている。

企業代表団の同行と「中英企業家委員会」の再開

今回の訪中には、リーブス財務相や企業・大学・文化機関のトップら約60名からなる大規模な代表団が同行する。代表団の顔ぶれはライフサイエンス、航空宇宙、金融サービスなど広範な分野を網羅しており、北京と上海を訪問する予定だ。

特筆すべきは、かつての「黄金時代」に設立され、その後中断していた「中英企業家委員会(UK-China CEO Council)」の再開である。中国のリ・チャン(李強)首相も出席するこの会合は、英国企業にとって中国市場における「重大な機会」を再構築するプラットフォームとなる。

一方で、スターマー首相は人権問題や安全保障問題について、中国指導部との会談で懸念を提起する意向も示している。これには、英国公民である黎智英(ジミー・ライ)氏の拘束問題などが含まれる。しかし、全体的なトーンとしては、国家安全保障を堅持しつつも経済協力を最優先する「デリスキング(リスク低減)」の枠組みに沿ったものとなっている。中国側も、安保理常任理事国同士の協力強化が世界の利益にかなうとして、この動きを前向きに捉える姿勢を示している。

訪中を終えた後、スターマー首相は31日に日本を初訪問する予定だ。中国との関係改善を足掛かりに、アジア太平洋地域でのプレゼンスを高める狙いがある。

[出典]

[関連情報]

#英国首相 #スターマー #訪中 #英中関係 #経済協力

タイトルとURLをコピーしました