中国軍No.2・張又侠氏失脚の深層:軍委主席責任制の破壊と習近平政権が直面する「建軍以来最大の敗北」

    異例の「死罪」示唆と軍報による断罪

    中国軍機関紙「解放軍報」は2026年1月26日、1面で「身分に免責権はなく、功績は罪を相殺する券にはならない」と題した極めて異例の長文を掲載した。これは同月24日に重大な規律違反で失脚した中央軍事委員会副主席・張又侠氏(上級大将)を念頭に、死罪の可能性すら示唆して厳罰に処す姿勢を鮮明にしたものとみられ、軍中枢に大きな衝撃が走っている。ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)などの報道によると、同紙は毛沢東がかつて汚職を犯した功臣を処刑した「泣いて馬謖を斬る」故事を引用し、「反腐敗において慈悲は絶対に許されない」と強調。張氏が「軍委主席責任制を深刻に破壊し、踏みにじった」と痛烈に批判した。

    習近平総書記の「最側近中の最側近」であり、ベトナム戦争の実戦経験を持つ数少ない将領であった張氏の失脚は、軍内における絶対的な権威である習氏への不忠が最大の要因と位置づけられている。失脚の表向きの理由には核機密の対米漏洩疑惑も取り沙汰されているが、多くの分析家は、軍内の整粛(清算)の過程で図らずも集中してしまった張氏の権力に対し、習氏が極度の警戒心を抱いたことが本質であると指摘する。

    「建軍以来最大の敗北」と台湾海峡への影響

    中国軍の最高機関である中央軍事委員会は、現在7人のメンバーで構成されているが、そのうち5人が失脚するという異常事態に陥っている。この現状に対し、米スタンフォード大学の呉国光氏は、上級大将層が事実上壊滅した現状を「建軍以来、最大の敗北を喫したようなものだ」と形容した。軍の指揮系統が再構築を余儀なくされるため、短期的には全面的な対台湾戦争に踏み切る軍事的能力は低下したとの分析が支配的だ。

    しかし、事態は楽観を許さない。呉氏は、2027年の「建軍100年目標」という政治的ノルマに折り合いをつけるための実績作りとして、習氏が局地的な軍事行動に打って出る懸念は依然として消えていないと指摘している。軍内の不満を外に向ける、あるいは自らの求心力を維持するために、台湾周辺や南シナ海での限定的な衝突が引き起こされるリスクは、指揮系統の混乱期こそ高まる可能性がある。

    権力闘争の果てに漂う「殺機」と軍内の沈黙

    張氏の落馬後、中国国内では公式報道を除いて軍内部からの支持表明が乏しく、全軍が沈黙を保っているとされる。元中央党校教授の蔡霞氏は、この沈黙こそが習氏の強引な手法に対する軍内の抵抗の表れであると分析する。習政権が掲げる「軍委主席責任制」は、軍の全権を主席一人に集中させる制度だが、それを「踏みにじった」とされる張氏への徹底的な攻撃は、独裁体制の脆弱性と猜疑心の深さを露呈している。

    かつての「世交(親の代からの付き合い)」や「発小(幼馴染)」という個人的な絆すら、権力維持の前には「抵罪券(罪を相殺する券)」にはならなかった。解放軍報が漂わせる「殺機(殺意)」は、軍内の全将兵に対し、いかなる実力者であっても絶対忠誠を欠けば破滅が待っているという恐怖を植え付ける意図がある。しかし、有能な職業軍人を次々と排除し、阿諛追従(あゆついしょう)のみが生き残る組織に変質した解放軍が、果たして習氏が望む「戦って勝てる軍隊」であり続けられるのか。軍の機能不全は、中国の国家安全保障そのものに深刻な影を落としている。

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    #張又侠 #習近平 #軍委主席責任制 #解放軍 #台湾海峡

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