
ネスレ粉ミルク回収の激震、汚染源は中国バイオ大手「嘉必優」か
世界的な食品大手ネスレ(Nestlé)などが絡む乳幼児用粉ミルクの回収騒動が、深刻な広がりを見せている。フランスやスイスのメディアが伝えたところによると、汚染源として疑われているのは、中国の原材料大手で上海証券取引所のハイテク新興企業向け市場「科創板」に上場する嘉必優生物技術(嘉必優/CABIO、湖北省武漢市)だ。フランス当局は、対象製品を摂取した乳児2人が死亡した事件との因果関係について、本格的な調査を開始した。
騒動の発端は2026年1月初旬、ネスレが特定ロットの乳幼児用粉ミルクに「セレウス菌(Bacillus cereus)」汚染の恐れがあるとして、世界的な予防的自主回収を発表したことにある。スイス連邦食品安全局などの公表により、原因は乳幼児の脳発達に欠かせない必須脂肪酸原料「アラキドン酸オイル(ARA)」の品質問題と判明した。その後の調べで、ARAの世界三大生産者の一角である嘉必優が、問題の原料供給源として特定された。同社はネスレやダノンといった国際企業に加え、伊利、聖元、蒙牛など中国国内の主要乳製品メーカーの多くに原料を供給しており、世界の乳幼児栄養チェーンにおいて「目立たないが不可欠な環」を担っている。
仏乳児死亡事件と拡大する供給網のリスク
フランスでは、回収対象の製品(ネスレ傘下の「ギゴズ(Guigoz)」等)を飲んでいた生後間もない乳児2人が相次いで死亡した。一人は生後2週間、もう一人は生後27日という極めて短い生涯だった。現時点で粉ミルクと死亡の直接的な因果関係は正式に確認されていないが、フランス保健省は重大な関心を寄せており、司法当局による死因究明が進められている。
この影響はネスレに留まらず、フランスの乳業大手ラクタリス(Lactalis)も同様の汚染リスクから、中国を含む18カ国で大規模な回収に踏み切った。同社もまた、嘉必優から供給された原料を使用していたとされる。スイスの栄養食品会社ホッホドルフ(Hochdorf)もヤギミルク製品の回収を発表するなど、被害は国境を越えて拡大している。嘉必優側の対応は遅れており、検査結果の公表を先延ばしにする一方で、複数の幹部が自社株を大量売却していた事実が露呈し、投資家の間でも不信感が渦巻いている。
背景:消えないメラミン事件の影と中国のジレンマ
中国において乳幼児用粉ミルクは、社会の根幹を揺るがす極めて敏感なトピックである。2008年に発生した「三鹿集団メラミン汚染ミルク事件」は、数万人規模の健康被害を出し、中国の食品安全体制に抜本的な改革をもたらした。検査基準の厳格化や罰則の重罰化が進められたが、一度失墜した消費者の信頼は完全には回復していない。現在でも、中国の富裕層・中間層は自国ブランドよりも、高価な海外ブランドの粉ミルクを強く支持する傾向がある。
今回の嘉必優による汚染疑惑は、ようやく自国ブランドの信頼を再構築しつつあった中国食品業界にとって、最悪のタイミングでの打撃となった。特に同社が「グローバル戦略」を成長エンジンとして掲げ、世界的な多国籍企業に深く食い込んでいた事実は、中国製原料が世界のサプライチェーン全体に及ぼす影響力と、その管理体制の脆弱性を浮き彫りにした。投資家や市場関係者は、今回の事態が投資家の信頼危機を招き、さらなる法規制の強化やサプライヤーの見直しにつながる可能性を注視している。
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