中国が米・イスラエル製セキュリティソフト排除を加速:国家安全保障と国産代替戦略の背景を詳解

中国による米・イスラエル製ソフト排除の衝撃

中国政府が国内企業に対し、米国およびイスラエル企業約10社のサイバーセキュリティソフトウェアの使用を停止するよう通達を出したことが、2026年1月14日に明らかになった。ロイター通信やフランス国際放送(RFI)が報じたところによれば、今回の措置は国家安全保障上のリスクを背景としたものであり、急進展する米中デカップリング(切り離し)の象徴的な動きと言える。

これまで中国市場で一定のシェアを誇ってきた外資系ベンダーにとって、この通知は事実上の市場締め出しを意味する。指名された企業には、米ブロードコム(Broadcom)傘下のVMware、パロアルトネットワークス(Palo Alto Networks)、フォーティネット(Fortinet)、そしてイスラエルのチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(Check Point Software Technologies)といった、世界をリードするセキュリティ大手が名を連ねている。

中国当局が抱く懸念は、これらのソフトウェアが企業ネットワークや個人のモバイルデバイスに対して持つ「広範なアクセス権限」に集約される。セキュリティソフトはその特性上、OSの深い階層まで監視する権限を持つ。北京側は、これらのツールがバックドアとして機能し、機密情報が収集されて国外へ転送されるリスクを理論上の脅威から実質的な脅威へと引き上げた形だ。

「国産代替」戦略の加速と自国ベンダーの台頭

今回の措置は、単なる一時的な規制ではなく、長年中国が進めてきた「IT製品の国産化」という国家戦略の一環である。北京は、特に重要インフラや政府関連のサプライチェーンにおいて、西側諸国のコンピューター機器やオフィスソフトウェアを自国製に置き換えることを最優先課題としている。

現在、中国国内で存在感を高めているのが、360安全科技(360デジタルセキュリティ)や東軟グループ(Neusoft)といった本土のセキュリティベンダーである。これらの企業は、中国政府の強力な後押しを受け、外資系企業が撤退を余儀なくされる空白地帯を埋める形で急速にシェアを拡大している。

一方で、排除の対象となった西側諸国の企業は、過去数年にわたり中国によるハッキング活動を繰り返し告発してきた。例えば、チェック・ポイントは直近の報告書で、中国に関連するハッカー集団が欧州の政府機関を攻撃したと指摘している。また、パロアルトネットワークスも、中国のサイバー攻撃が世界各国の外交官を標的にしていると非難してきた。このような相互の不信感が、技術的な相互運用性を損なわせ、世界的な「インターネットの分断(スプリンターネット)」を加速させている。

4月のトランプ訪中と今後の米中外交

政治的なタイミングも重要である。2026年1月現在、米中両国は脆弱な貿易休戦を維持しつつ、4月に予定されているトランプ米大統領の北京訪問に向けた準備を進めている。しかし、外交上の歩み寄りとは裏腹に、ハイテク分野での対立は激化の一途を辿っている。

トランプ氏が昨年初めにホワイトハウスへ復帰して以降、米政府は対中輸出規制や投資制限を強化しており、中国側もこれに対抗する形で「国家安全保障」を盾に西側企業の参入を制限している。今回のセキュリティソフト排除は、外交的な交渉カードとしての側面を持ちつつも、実態としては不可逆的な「技術的自立」への意志表示であると分析される。

今後、中国国内で事業を展開する外資系企業は、より厳しいコンプライアンスと監視にさらされることになるだろう。また、この動向は日本を含む他国のサイバーセキュリティ政策やサプライチェーンのリスク管理にも大きな波紋を広げることは必至である。


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