
「中国のエルサレム」温州で雅陽教会が強制解体
キリスト教徒が人口の約15%(約140万人)を占め、街中に教会が点在する景観から「中国のエルサレム」と称される浙江省温州市で、宗教弾圧が激化している。2026年1月初旬、温州市泰順県雅陽鎮にある非公認(地下教会)の「雅陽教会」に対し、地元当局は大型重機を投入した強制解体に乗り出した。
英BBC放送(中国語版)や米人権団体「対華援助協会(ChinaAid)」の報道によれば、現場ではクレーン車が建物を包囲し、屋上から建築資材が次々と投げ落とされる様子が確認されている。事態が緊迫化したのは昨年のクリスマス前。警察当局による包囲網が敷かれ、これまでに信徒100人以上が連行された。現在も教会の責任者である林恩兆氏、林恩慈氏を含む20人以上が勾留されており、当局側は具体的な容疑を明かしていない。
現場周辺には約1000人規模の警察・防暴要員が配備され、全方位的な監視体制が敷かれている。通行人のスマートフォンが検査されるなど情報統制が徹底されており、SNS上で現場の状況を発信したとして拘束される市民も出ている。
国旗掲揚拒否と「宗教中国化」の政治的背景
今回の強制解体の直接的な引き金となったのは、教会の「中国共産党への忠誠」を巡る対立だ。2025年6月、雅陽鎮の李斌鎮長が率いる当局チームが教会に旗竿を設置し、中国国旗(五星紅旗)を掲揚するよう強要。これに対し、信仰の純粋性を守ろうとする林氏兄弟ら教会側が拒絶したことで、当局との対立が決定定的となった。
この強硬姿勢の背景には、習近平政権が推進する「宗教の中国化」方針がある。これは、すべての宗教を中国共産党の指導下におき、教義や儀式を中国共産党の価値観に適合させる政策だ。2025年11月末には、共産党泰順県委員会が習総書記の講話を引用し、宗教の中国化に対する「消極的な抵抗」を厳しく批判する通達を出していた。当局にとって、政府公認の宗教団体(三自愛国教会など)に属さない「非公認教会(地下教会)」の存在は、党の支配に服さない異分子とみなされている。
全国へ広がる弾圧の波と2014年の記憶
温州における大規模な弾圧は、今回が初めてではない。2014年、浙江省当局は「違法建築」を名目に浙江・温州で十字架撤去を断行し、1000以上の教会から十字架が引き剥がされた。当時、雅陽教会の信徒らは数ヶ月にわたる抗議活動を展開して建物を守り抜いたが、今回の解体はその際のリベンジとも言える強硬なものとなっている。
また、こうした弾圧は温州に留まらない。四川省成都市でも2026年1月6日、非公認の「秋雨聖約教会」の神職ら少なくとも9人が警察に連行された。同教会では過去にも国家転覆罪で非公認教会の牧師拘束などの弾圧が続いており、今回の温州の事案とあわせ、中国全土でキリスト教への締め付けが組織的に強化されていることが鮮明となっている。
さらに当局の矛先はキリスト教のみならず、モスクの中国風改造に住民抗議が起きた雲南省の事例のように、イスラム教など他の宗教にも及んでいる。今回の雅陽教会の解体は、信仰の自由よりも党の指導が絶対視される、現代中国の厳しい宗教情勢を象徴している。
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