中国農村で抗議活動が7割急増 地方債務の危機と土地収用が招く民衆の反発

激増する農村抗議活動:2025年の情勢不安

中国の農村部において、地方政府の強引な政策や経済不振を背景とした住民の抗議活動が、かつてない規模で激増している。英ガーディアン紙は2025年12月19日、米フリーダム・ハウス傘下の「中国異議モニター(CDM)」による調査結果を引用し、同年1月から11月末までに記録された農村部の抗議件数が661件に達したと報じた。この数字は、2024年通年の記録と比較して約70%という驚異的な増加率を示しており、中国社会の底流で緊張が急速に高まっている実態を浮き彫りにしている。

具体的な事例として、11月には海南省臨高県において、地元の小さな道教寺院の解体計画に反対する住民が警官隊と激しく衝突する事件が発生した。SNSに投稿された動画では、住民が伝統的な厄払いの風習に従って警官に米を投げつけ、抵抗する姿が拡散されている。また、同時期には貴州省でも火葬の義務化という中央の指示を巡り、伝統的な土葬を重んじる村人と当局が衝突し、怒った住民が当局者を制圧して跪かせるという異例の事態まで報告された。

44兆元の地方債務と土地収用の悪循環

抗議活動の主因となっているのは、地方政府が抱える深刻な財政難と、それに伴う強引な土地収用である。地方政府の負債総額は推計で少なくとも44兆元(約970兆円)という天文学的な数字に達している。長引く不動産不況により、かつての主な収入源であった土地使用権の売却収入が激減する中、地方当局は債務の利払い資金や行政運営費を確保するため、新たな農地の強制収用に踏み切らざるを得ない状況にある。

収用された土地は、不動産市場が低迷していても、新規融資を受けるための担保として利用価値を持つ。しかし、地方政府は財政難を理由に、住民が納得できるレベルの補償金を提供できていない。生活の基盤である農地を適正な対価なしに奪われた住民の怒りは、地域の安定を優先する「維穏(安定維持)」政策を突破し、直接的な抗争へと発展している。

都市から戻った「内捲」世代と「三無」の絶望

今回の抗議活動のもう一つの特徴は、抗議の主体が従来の農民層に留まらず、都市部から帰郷した若者や出稼ぎ労働者(農民工)に広がっている点である。中国経済の成長鈍化と、過度な生存競争を指す「内捲(インボリュート)」の激化により、大都市での成功を諦めて故郷へ戻る者が後を絶たない。

しかし、帰郷した彼らを待ち受けていたのは、共産党が約束した繁栄ではなく、さらなる困窮であった。現在の農村では、「仕事がない」「耕す土地がない」「行く場所がない」という、いわゆる「三無」の状態が深刻化している。都市生活で培われた権利意識や政治的覚知を持つ若者らは、農村の理不尽な現状に対して声を上げやすく、不満が揮発性の高い怒りとなって噴出している。

中央政府の対応と体制への潜在的圧力

中央政府はこの事態を重く受け止め、2025年9月時点で全国に約2,800カ所のサービスセンターを設置した。ここにはソーシャルワーカーや法的助言者、心理カウンセラーが配置され、紛争がエスカレートする前に仲裁を試みるという「社会統治の末端強化」を図っている。

しかし、専門家は「これらの抗議が直ちに中央政府を転覆させることはないが、地方当局の対応能力を麻痺させ、システム全体に深刻な圧力をかける」と分析している。経済低迷という構造的な問題が解決されない限り、農村から湧き上がる「民怨」は今後も拡大し続ける可能性が高い。

[出典]

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