中国最大淡水湖、鄱陽湖が極枯水位に低下 渇水の常態化が示す生態系への深刻な影響

中国最大の淡水湖である鄱陽湖の水位が2025年12月14日、8メートルの「極枯水位線」を下回った。代表的な水文観測点である江西省星子観測所では、水位が7.97メートルまで低下し、長江とつながる水域面積は豊水期と比べ約9割縮小した。湖底や中洲、砂州が大規模に露出し、鄱陽湖は全面的に渇水期の様相を呈している。

■ 渇水 過去数年で「異常」から「常態」へ

鄱陽湖の渇水は、単年の異常気象による一過性の現象ではない。2025年は8月8日に水位が12メートルの枯水線を下回り、平年より87日も早く渇水期に突入した。年内に枯水線以下となった日数は217日に達し、年間の約3分の2が渇水状態となっている。

近年の傾向を見ると、
・渇水期の前倒し
・渇水期間の長期化
・水位低下スピードの加速
という特徴が顕著だ。2022年には水位が4.6メートルまで低下し観測史上最低を記録。2023年は7月20日に渇水期入りし、史上最早。2024年には1日最大0.45メートル、1週間で2.68メートルという過去最大の水位低下が観測された。

これらは、長江流域全体における降水パターンの変化、上流域の水文条件変動、そして気候変動の影響が重なった結果とみられている。

■ 「水中のパンダ」長江江豚に迫る危機

鄱陽湖は、中国国家1級保護野生動物である長江江豚の重要な生息地だ。長江江豚は世界で唯一の淡水性イルカで、「水中のパンダ」とも呼ばれる。生息数は極端に少なく、環境変化に非常に弱い。

水位低下は、
・生息域の縮小
・餌となる魚類の減少
・座礁や囲い込みのリスク増大
を引き起こす。実際、江西省当局は江豚の集中分布水域で重点監視を実施し、船舶の航行制限や減速措置、保護区内での錨泊禁止などを強化している。

■ 渡り鳥・湿地生態系への連鎖的影響

鄱陽湖は、白鶴、ソデグロヅル、マナヅルなど数十万羽規模の渡り鳥の越冬地でもある。水位低下により湿地環境が変化すれば、餌資源や休息環境が失われ、生態系全体に連鎖的な影響が及ぶ。

専門家は、鄱陽湖の渇水常態化が「中国最大の淡水湿地システムの構造的変化」を引き起こしかねないと警鐘を鳴らしている。

■ 江西省の対応と今後の課題

江西省は最高レベルの「水生生物保護赤色警報」を発令し、24時間体制の監視と緊急救護を開始した。
主な対策は以下の通りだ。

・重点水域の常態化巡視
・魚類の救助・移送放流
・生態補水の科学的実施
・航行制限による人為的影響の抑制

一方で、水文当局は「水位は当面、低下傾向が続く」との見通しを示しており、短期的対策だけでなく、長江流域全体を視野に入れた中長期の水資源管理と気候変動対策が不可欠となっている。

出典

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