中国では近年、HIV感染やエイズをめぐる問題が「高齢者の課題」として再認識されつつある。これは単なる統計上の増加ではなく、中国社会が抱える高齢化、都市化、家族構造の変化、医療認識の遅れが複合的に表面化した結果だ。
本記事では、「なぜ高齢者なのか」「なぜ防げていないのか」という点に焦点を当て、背景構造を分解していく。
なぜ高齢者が新たな感染リスク層になったのか
中国では急速な高齢化が進む一方、高齢者の性や健康に関する議論は長く避けられてきた。配偶者と死別した男性、子どもと別居する独居高齢者が増え、生活上の孤立が進んでいる。
しかし、性行動そのものが消えるわけではない。
この現実を制度や教育が正面から扱ってこなかったことが、リスクの温床となった。
(内部リンク例)
→ 中国の高齢化と社会構造の変化
→ 中国における単身高齢者問題
なぜ20元性取引が感染拡大に直結するのか
多くの地域で、20〜50元(約440~1100円)程度の低価格性取引が地下的に存在している。価格が低いこと自体よりも、以下の点が問題とされる。
- 衛生管理が行われない
- コンドーム使用が徹底されない
- 利用者が固定化し、感染網が閉じる
この結果、HIVが「外から見えない形」で循環する。
高齢男性がこのネットワークに組み込まれ、さらに配偶者や固定パートナーへと広がる構造が生まれる。
なぜコンドームが使われないのか
高齢者層では、コンドームを「避妊の道具」としか認識していない人が多い。
- 妊娠しない年齢 → 不要
- 性病は若者のもの
- 年齢的に感染しない
こうした誤解は、性教育が若年層で止まっている社会構造の結果でもある。
HIVとエイズは何が違い、なぜ混同されるのか
HIVはウイルスであり、エイズは病気の状態だ。
HIVに感染しても、治療を行えばエイズに進行しない。
しかし高齢者層では、
- HIV=エイズ
- エイズ=死の病
という認識が根強く、検査=人生の終わりと受け取られがちだ。
(外部リンク)
WHO:HIVとAIDSの基礎解説
https://www.who.int/teams/global-hiv-hepatitis-and-stis-programmes
なぜ「隠す」「治療しない」という行動が起きるのか
高齢者にとって、HIV感染は医療問題である以前に社会的烙印となる。
- 家族に知られたくない
- 子どもに軽蔑されたくない
- 地域で噂になりたくない
その結果、
- 服薬を隠す
- 治療を中断する
- 医療機関から距離を取る
という行動が生まれる。
実は若者より危険な医学的理由
高齢者は免疫機能が低下しており、HIV感染後の進行が早い。
糖尿病や高血圧などの慢性疾患と重なることで、治療はより複雑になる。
「年だから仕方ない」という判断は、医学的にはむしろ逆だ。
中国の公衆衛生政策はどこで遅れているのか
中国のHIV対策は、長年「若者」「ハイリスク集団」を中心に設計されてきた。
高齢者は制度上、想定外の存在だった。
今後求められるのは、
- 高齢者向けの検査導線
- 健康診断へのHIV検査組み込み
- 恥を伴わない相談環境
といった、設計思想そのものの転換だ。
これは感染症ではなく「社会設計」の問題だ
中国の高齢者HIV感染問題は、単なる医療問題ではない。
性、老い、家族、恥、制度――それらを長年避けてきた結果が、いま数字として現れている。
沈黙を前提にした社会では、感染は止まらない。
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