中国で高齢者層のHIV感染者およびエイズ患者が増加している。感染リスクは若年層に限られた問題ではなく、50歳以上、特に60歳以上の増加が目立つ。低価格の性取引、コンドーム使用率の低さ、HIVとエイズの混同、さらに「恥」を理由に病状を隠す行動が、防疫対策を難しくしている。
中国疾病予防管理センターなどの研究によると、50歳以上のHIV感染者は2015年の約3万3000例から2022年には約5万2000例に増加した。浙江省では今年の新規感染者の約4割を50歳以上が占め、西南部や華南地域の一部省でも感染拡大が深刻化している。
背景として指摘されているのが、20〜50元程度で利用できる低価格の性取引だ。配偶者と死別した男性や独居の高齢男性が利用するケースが多く、感染の「見えにくい経路」になっているという。全国的に見ると、高齢感染者の9割超は性行為による感染とされる。
一方、高齢者のコンドーム使用率は1割未満にとどまる。「年を取れば感染しない」「避妊の必要がなければ防護は不要」といった誤解が根強く、性の健康教育はほぼ行われてこなかった。
さらに深刻なのが病状の隠蔽だ。高齢の感染者の中には「死んでも恥はさらせない」として家族に打ち明けず、治療を拒否したり、服薬を隠したりする人もいる。専門家は、HIVは感染段階で治療すれば進行を抑えられるとした上で、高齢者向けの啓発や検査体制の強化が不可欠だと指摘している。

