
北京初のペット毒殺事件、刑事責任を明確化
北京市朝陽区人民法院温楡河人民法廷は2025年12月11日午前、毒物入りの餌を団地内に投棄し、他人のペット犬を中毒死させたとして、「危険物質投与罪」に問われた張某某(65歳)に懲役4年の実刑判決を言い渡した。被告は判決言い渡し後、法廷で控訴の意思を示した。
中国メディアによると、ペットの毒殺行為が刑事事件として有罪判決を受けたのは北京では初めてであり、公共空間での毒物投棄行為を厳しく断罪した点が注目されている。
事件の経緯と被害の実態
判決によると、張某某は2022年9月14日、北京市朝陽区の暢頤園団地の公共区域に、殺鼠剤として用いられる劇毒物質「モノフルオロ酢酸ナトリウム」に浸した鶏の首を投棄した。これにより団地住民が飼育するペット犬11匹が中毒症状を示し、うち9匹が死亡した。
被害犬の中には、住民の李女士が13年間飼育していたウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアも含まれていた。毒物は人に対しても致死性が高いとされ、裁判所は「特定の犬を狙ったとしても、公共区域に毒物を放置する行為自体が不特定多数の生命・身体に危険を及ぼす」と指摘した。
刑事裁判と損害賠償請求は別線で進行
本件は刑事公訴事件であり、12月11日に言い渡された判決は、あくまで被告の刑事責任を判断したものである。一方、被害犬の飼い主である李女士ら11人は、刑事裁判に附帯する形で損害賠償を求める訴えも起こしている。
中国では、刑事裁判に付随して民事上の損害賠償を求める「刑事附帯民事訴訟」が認められているが、刑事判決と賠償判断は制度上区別される。今回の懲役4年判決は、李女士の個人的行動や賠償請求の有無によって左右されたものではなく、公共安全を害した行為としての刑事責任に基づく判断である。
背景にある社会的課題と政策的意味
近年、中国の都市部ではペット飼育の増加に伴い、飼育マナーやトラブルを巡る摩擦も顕在化している。過去の類似判例では、毒犬目的であっても公共空間に毒物を投棄した場合、「危険物質投与罪」が適用されてきた。
今回の北京初の判決は、ペットの価値評価そのものよりも、「公共安全を脅かす行為」を明確に処罰する姿勢を示した点に政策的意義がある。今後、同種事案における量刑判断の基準として参照される可能性が高い。

